イギリスのスウィンドン工場で作られ、日本には限定で入ってきた3ドアのタイプR。FN2シビック タイプR ユーロは、国内のタイプRの系譜の中でも異質な存在です。
そして中古で買うとき、この「異質さ」がそのまま難しさになります。壊れる確率より、直せるかどうかが問題になる車だからです。
構成を押さえておきます。エンジンはK20系の2.0L自然吸気で、変速機は6速MT。骨格は欧州で開発された3ドアハッチで、リアサスペンションは日本仕様のFD2と違いトーションビーム。日本のタイプRとは、成り立ちから別物です。
最大の論点は、部品が出るかどうか

FN2は2007年に登場し、日本での限定販売も2010年前後です。つまりいま買うなら15年落ち前後になります。この年式で来るものは、だいたい決まっています。
国内に入ってきた台数が限られるため、購入を検討するなら在庫が出た時点で動く必要があります。条件を絞って待つより、程度の良い個体を見つけたら現車を見に行く、という進め方が現実的です。
点火系とインジェクター。 プラグ、コイル、そしてインジェクターの詰まり。アイドリングの不安定や、高回転での息つきとして出ます。
オルタネーターとスターター。 どちらも経年で寿命が来ます。始動時の音、アイドリング時の電圧の落ち込みを試乗で確認してください。
冷却系。 ラジエターホースの亀裂や滲み。K20は高回転を多用するエンジンなので、冷却系の手抜きは致命傷につながります。
これらは「壊れる」というより「順番が来る」ものです。購入価格に加えて、初年度に整備費を積んでおくのが現実的です。
優先順位をつけるなら、まず冷却系、次に点火系、そのあとに充電系です。冷却系の不調はエンジン本体に波及しますが、点火系や充電系は交換で戻ります。予算が限られるなら、この順で手を入れてください。
加えて、タイヤとブレーキも見ておきましょう。タイプRという性格上、前オーナーが攻めた使い方をしていれば、ローターとパッドは相応に減っています。
生産時期による電装のリコール
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加えて、この年代のホンダ車で共通して見ておきたいのがゴム類です。エンジンマウント、サスペンションのブッシュ、ドライブシャフトのブーツ。どれも15年で硬化し、乗り味と異音に出ます。タイプRの硬さと、ブッシュが抜けた不快さは別物なので、試乗で区別してください。
平成21年10月から平成22年10月の期間に生産された個体には、製造時に電気配線を傷つけていたことに起因して、ヘッドライトやフォグランプなどが点灯しなくなるおそれがあるとしてリコールが出された経緯があります。
該当する時期の個体を検討するなら、対策済みかどうかを販売店に確認してください。実施記録が残っていれば安心材料になります。
エンジンの状態は、キャップ裏で分かる
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もうひとつ、冷間始動時のVTECの切り替わりも確認しておきましょう。高回転域で切り替わる機構なので試乗では確かめにくいのですが、切り替わったときに明確な音と力の変化があるかどうかは、安全な速度域でも判断できます。
K20系は、まともに管理されていれば非常に頑丈なエンジンです。逆に言えば、管理が悪い個体は目に見えて傷んでいます。
いちばん手っ取り早いのは、オイルフィラーキャップを開けて裏側とエンジン内部を覗くことです。ヘドロ状のスラッジが付いているようなら、その先で焼き付きなどの高額修理が待っている可能性があります。オイル管理を怠った高回転型エンジンは、あとから取り返せません。
あわせて、記録簿でオイル交換の頻度を確認してください。タイプRという性格上、回されてきた車です。回すこと自体は問題ありませんが、回したうえで管理されていたかどうかが決定的に効きます。
高回転を多用する車では、オイル交換の「距離」より「使い方」が効きます。サーキット走行歴があるなら、その前後で交換されているかを確認してください。記録簿にサーキット走行の記述はありませんが、交換の間隔が不自然に短い時期があれば、そういう使い方をしていた可能性があります。
FD2とどちらを選ぶか
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価格面でも差があります。FD2は玉数が多く選びやすい一方、人気ゆえに底値では買えません。FN2は台数が少ないぶん、程度と価格の組み合わせが極端になりがちです。FN2は「見つけたときに決められるか」が勝負になります。
国内のタイプRとしては、同時期に4ドアのFD2があります。FD2のほうが台数が多く、部品も出やすく、サーキットでの性能も一段上です。「タイプRの走りが欲しい」だけなら、FD2のほうが合理的です。
それでもFN2を選ぶ理由があるとすれば、この車の成り立ちそのものでしょう。欧州のホットハッチとして設計され、日常での快適性や質感を残したまま、タイプRを名乗った。乗り味も内装の雰囲気も、FD2とは別の車です。
つまりFN2は、性能で選ぶ車ではなく、性格で選ぶ車です。ここに納得できるかどうかが、購入判断の中心になります。
現車確認で見るべきポイント
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- エアコン:最大冷房での冷え、コンプレッサーの作動音。交換記録があれば大きな加点
- オイルフィラーキャップの裏:スラッジの有無。最優先で見る
- リコールの実施記録:平成21年10月〜22年10月生産の個体は電装のリコール対象の可能性
- 始動と充電:セルの回り方、アイドリング時の電圧、警告灯の履歴
- 冷却系:ホースの硬化と亀裂、リザーバータンクの液量と色
- 細かい専用部品:ミラー格納、フォグランプの変色、テールゲートダンパーの抜け
- 記録簿:オイル交換の頻度。無い個体は避ける
この車に手を出してよい人、やめた方がよい人
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維持費としては、2.0Lで自動車税は3万9500円の区分。ハイオク指定で実燃費は街乗り9〜11km/L程度。タイヤは18インチで、タイプR向けの銘柄を選べば負担は小さくありません。それでも国産スポーツとしては、維持しやすい部類です。
向いている人は、この車でなければ意味がない人です。日本のタイプRとは別の思想で作られた3ドアハッチで、しかも国内では限られた台数しか入っていません。希少性と成り立ちに価値を感じ、部品探しも含めて楽しめるなら、代わりはありません。
やめた方がよい人は、確実に長く乗りたい人です。部品供給の細さは、努力では埋まりません。同じ予算でタイプRの走りを求めるなら、FD2のほうが安心です。
結局、FN2の中古は買いなのか
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買ったあと最初にやることとしては、エアコンの動作確認(夏でなくても最大冷房で回す)、点火系の状態確認、そして冷却系のホース類の点検。この3つを最初に済ませておけば、突然止まる可能性はかなり下がります。
整備記録があり、エアコンに手が入っていて、部品を探せる店とつながれるなら買いです。 逆に、そのどれも無い状態で価格だけを見て買うと、動かせない期間の長い車になりかねません。
FN2は、ホンダが欧州で戦うために作ったタイプRです。日本では少数派だったこと自体が、いまとなっては価値になっています。

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