カテゴリー: Honda

  • クルマを知るだけじゃ、わからないもの

    クルマを知るだけじゃ、わからないもの

    このサイトでは、クルマの型式や世代ごとの違いを追っています。エンジン、車重、駆動方式を調べれば、作り手の選択も見えてくる。

    でも、走らせたときの感覚だけは記事に収まりません。ハンドルを切った瞬間の反応や、コーナーの出口でアクセルを踏んだときの落ち着き方。そこは実際に乗って初めてわかる部分です。

    実はなんですが、このサイトとは別に「Sutututu」も運営しています。サーキットの一周を記録し、過去の自分やほかの人とリアルタイムゴーストで走れるiPhoneアプリです。

    クルマ好きのみなさまには、是非ともそっちも使ってもらいたい。そこで今回は、みなさまがサーキットに行きたくなる話をしたいと思います。

    https://apps.apple.com/jp/app/6743934576

    ロードスターは走らせてこそ分かる

    https://kuruma-dna.com/nd5rc

    たとえばNDロードスター。フロントはダブルウィッシュボーン、初期型のSは990kg。文字だけでテンションが上がりますね。

    でも、マツダがロードスターで本当に見せたいのは数字だけではなく、運転したときの感覚だと思うのです。コーナーで限界に近づいても、いきなり破綻せず最後まで緩やかに粘る。この動きは「軽いFR」の一言では伝わりません。自分で走らせて初めてわかる部分です。

    サーキットで剥がれる、クルマの本性

    富士スピードウェイを走るメガーヌ R.S.の車内
    富士スピードウェイでの走行。画像:筆者撮影

    公道でもクルマの挙動はある程度わかります。ただ、サーキットのブレーキングとコーナリングで受けるGは段違いです。タイヤがどこまで踏ん張るのか。限界に達したとき、クルマはどう動くのか。ロードスターの「最後まで粘る」という話も、そこで初めて実感できる。

    しかもサーキットなら、同じコーナーを何度でも走れます。一周目に感じた動きを、次の一周で確かめ直せる。だから一度は走りに行ってほしい。

    ロードスター以外でも走れる

    https://kuruma-dna.com/zc33s

    ロードスターNR-Aのパーティレース、GR86/BRZ Cup、そしてN-ONE OWNER’S CUP。スイフトスポーツZC33Sも筑波サーキットのタイムアタックイベントで対象車両に挙がっています。

    自分のクルマで走るなら、走行会があります。参加できる走行会を一つ見つけて、実際にコースへ出てみてください。

    最初の走行で見えるもの

    コースへ入った途端、普段乗っているクルマでも反応の大きさが違います。ブレーキで前へ荷重が移り、コーナーでは体が投げ出される。アクセルを踏めば、また違う姿勢になる。知っているつもりだったクルマに、まだ知らない動きがあったわけです。

    何周か走るうちにコースの形が頭に入り、自分の操作とクルマの動きがつながってきます。ブレーキの踏み方を変えたらどうなるか。その答えを、次の一周で試せる。

    同じコーナーをもう一度走る

    うまく曲がれなかったコーナーにも、次の周回で戻ってこられます。さっきより落ち着いて曲がれた。少し急いだら、クルマの動きが乱れた。

    その違いを考えながら、また同じコーナーへ向かう。同じコースを繰り返すうちに、自分の運転の癖まで見えてきます。その日の一周を記録しておけば、次に来たときの相手になる。

    ゲームのゴーストを現実のサーキットで

    サーキットの路面を背景にしたSutututuのリアルタイムゴースト画面
    Sutututuのリアルタイムゴースト画面。画像:Sutututu

    そこでSutututuのリアルタイムゴーストです。GPSで記録した過去の一周が、次の走行ではコースに現れます。前の自分との位置関係や秒差は、走行中にも変わっていく。

    レースゲームで自分のベストラップのゴーストと走ったことがある人なら、この面白さはわかるはず。あれを実際のクルマとサーキットでやる。前の自分が速かった場所では離される。今回はうまく走れた場所で近づく。我ながら素晴らしいものを実装したと思います。

    今日の一周が次回のゴーストに。同じ走行中に自己ベストを更新したら、次の周回から新しい記録と走れます。走るたびに相手が変わるわけですね。

    同じコースを走った誰かとも

    フォローした人が共有した走行記録も、条件が合えばゴーストに選べます。本人がいなくても、過去の一周がコース図上の相手です。公開タイムはSutututuのWebでサーキットや車種から探せます。

    自分が走るコースの記録を見つけたら、次はその一周を追いかけたくなる。速い人のゴーストを追う。前の自分の一周を抜きにいく。走りに行くたび、比較する相手が増えていく。

    クルマを知ったら走ってみる

    系譜記事には、作り手が何を選んだかを書いてきました。サーキットでは、メーカーが残したかったものが自分の手にどう伝わるのかまでわかる。

    はじめてで手が出ない人も、自分のクルマで参加できる走行会を一つ見つけてコースを走ってみてください。帰ってから同じ系譜記事を読むと、車重や足回りの数字も違って見えるはずです。

    そして、もし走りに行くなら、是非ともSutututuのiPhoneアプリも使っていただきたい…!

    https://apps.apple.com/jp/app/6743934576

  • N-ONE(JG1/JG2)の中古車ガイド【CVTの履歴が、判断のほぼすべて】

    N-ONE(JG1/JG2)の中古車ガイド【CVTの履歴が、判断のほぼすべて】

    2012年に登場した初代N-ONE(JG1/JG2)は、背の高いスライドドア車が主流の軽市場で、あえて背の低い丸目のハッチバックを選んだ車です。参照したのは1967年のN360。

    中古では手頃な価格で流通していますが、確認すべき点は一箇所に集中しています。CVTです。

    構成を確認しておきます。エンジンは660ccのS07A型で、自然吸気とターボの両方を用意。変速機はCVT、駆動は前輪と四輪。車重は800kg台で、背の低いハッチバックとしては十分に軽い部類です。

    CVTのリコールを最初に確認する

    https://kuruma-dna.com/jg1

    初代N-ONEには、CVTの油圧制御プログラムが不適切であることに起因するリコールが出ています。

    内容は具体的で、変速レバーを前進または後退へ操作した直後にすばやくアクセルを踏むと、CVTのドライブプーリーシャフトに高い負荷がかかり、繰り返すとシャフトが折損して走行不能になるおそれがあるというものです。

    走行不能に直結する内容なので、中古で買うなら車台番号で対象かどうかと実施済みかを必ず確認してください。 対策はプログラムの書き換えなどで対応されます。

    10万km前後からのCVT摩耗

    https://kuruma-dna.com/jg3

    リコールとは別に、距離を重ねた個体ではCVT内部の摩耗が進みます。加速中に滑るような感覚、変速ショックの増大、異音、警告灯が症状として挙げられます。

    そして最悪の場合、CVTの載せ替えになります。修理費が30万円を超える例も語られており、軽自動車の中古価格を考えると、車両価格に匹敵する出費です。

    だから確認すべきはCVTフルードの交換履歴です。記録簿に交換歴がある個体を優先してください。 無交換で10万kmを超えている個体は、リスクを織り込む必要があります。

    CVTフルードの交換は、指定の油脂を使うことが前提です。汎用品で済ませた履歴がある個体は、かえって不調の原因になることがあります。「交換した」だけでなく「何を入れたか」まで確認できると理想的です。

    試乗では、平坦路での加速で回転だけが上がって速度が乗ってこないか、発進時に不自然な振動がないかを見てください。発進時の振動は、この車で報告の多い症状のひとつです。

    細かいが、確実に出るもの

    https://kuruma-dna.com/pp1

    電動ドアミラーの作動不良。 格納しない、戻らないといった症状です。走行に支障はありませんが、直すとユニット交換になりがちです。

    塗装の劣化。 経年でクリア層が傷む個体があります。屋外保管の個体では、ルーフやボンネットの状態を確認してください。

    エアコンの排水まわり。 ドレンの詰まりで室内側に水が回ることがあります。助手席足元のカーペットが湿っていないか、必ず触って確認してください。

    始動系のトラブル。 セルの回り方が重い、かかりにくいといった症状です。バッテリーの劣化と紛らわしいので、試乗では冷えた状態から始動させてもらってください。

    加えて、10年落ちに近い個体ではバッテリーとセルモーターの両方が寿命に近づいています。始動に一瞬の間がある個体は、購入後すぐに交換が必要になると考えてください。

    グレードとRSの位置づけ

    N-ONE(JG1)
    画像:Tokumeigakarinoaoshima/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    N-ONEにはターボ車とNA車があり、上級のRSは走りに振ったグレードです。中古市場ではRSに人気が集まり、価格も上です。

    ただしターボ車は、そのぶん熱の負担がかかります。オイル管理の履歴は、NA車以上に重要になります。

    日常の足として使うなら、NAでも十分です。「N-ONEに乗りたい」のか「RSに乗りたい」のかで、探し方が変わります。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/gk3-gk6

    • CVTのリコール実施記録:車台番号で確認。最優先
    • CVTフルードの交換履歴:記録簿。無交換の高走行車は避ける
    • 発進と加速:発進時の振動、加速中の滑り、変速ショック、異音
    • 電動ミラー:格納と復帰の動作
    • 助手席足元:エアコンドレンの詰まりによる湿り
    • 塗装:ルーフとボンネットのクリア層
    • 始動性:冷間から始動させてもらう
    • オイル管理:特にターボ車。フィラーキャップ裏の汚れ

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/jw5

    向いている人は、背の低い軽自動車を探している人です。いまの軽市場はスライドドアの背高車が主流で、N-ONEのような選択肢は年々減っています。 低い重心と素直な操縦性は、この形でなければ得られません。

    デザインで選ぶ人にも向いています。N360を参照した造形は、2代目でもほぼ変えられませんでした。それだけ完成度が高いということです。

    やめた方がよい人は、CVTのリスクを負いたくない人です。距離を重ねた個体では、載せ替えの可能性が現実的にあります。車両価格が安いぶん、修理費の比率が大きくなるのがこの車の難しさです。

    維持費は軽自動車なので最小クラスです。自動車税は年1万800円、燃費も実用域で20km/L前後。日常の負担は軽い。だからこそ、CVTという一点だけに注意を集中させてください。

    結局、N-ONEの中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/fk2

    リコールが実施済みで、CVTフルードの交換履歴があり、発進時に異常がない個体なら買いです。 逆に、記録が無く距離だけ伸びた個体は、安くても避けてください。

    N-ONEは、いちばん売れる形を選ばなかった軽自動車です。その判断に価値を感じるなら、いまが手頃に買える時期です。

  • プレリュード AB/BA1が欲しい? ならこう探す【40年落ちのデートカーを、錆で選ぶ】

    プレリュード AB/BA1が欲しい? ならこう探す【40年落ちのデートカーを、錆で選ぶ】

    1982年に登場した2代目プレリュードは、日本の「デートカー」という商品類型を事実上作った一台です。リトラクタブルヘッドライトで先代よりボンネットを80〜100mm下げ、フロントにダブルウィッシュボーンを採用しました。1985年には2.0LのB20A型を積む「2.0Si」(BA1型)も加わります。

    そして40年以上が過ぎたいま、この車を中古で買うというのは、まず一台見つけることから始まる話になります。

    この世代の中身も確認しておきます。1982年11月に登場し、フロントにダブルウィッシュボーンを採用。リトラクタブルヘッドライトによってボンネットを先代より80〜100mm下げました。1985年6月にはB20A型を積む2.0Si(BA1型)が追加されています。

    見るべきは錆。これが8割

    https://kuruma-dna.com/ab

    この年代の車を選ぶとき、最優先はエンジンでも内装でもありません。錆とモノコックの状態です。

    理由は単純で、他はどうにかなるからです。エンジンは載せ替えられます。内装は程度を妥協できます。しかし車体が錆で痩せていたら、直すには時間もお金も途方もなくかかります。

    見るべき場所は、フロア、リアの足まわり取り付け部、フェンダーの内側、リトラクタブル機構の周辺、そしてサイドシルの内側。覗き込める場所は全部見てください。 下に潜れるなら潜ってください。ここに時間をかけるだけで、購入後の運命が変わります。

    確認の順番としては、まず外から全体のプロポーションを見て、パネルの隙間が均一かを確かめる。次にドアを開けてサイドシルを見る。そしてトランクとボンネットを開け、内側の合わせ目を見る。最後に下に潜る。上から下へ、外から内への順で見ると、見落としが減ります。

    なお「80年代のホンダ車はボディ剛性が無い」とよく言われますが、これは一概には言えません。走行距離が少なく、錆の少ない個体は、いま乗ってもしっかりしていることがあります。先入観ではなく、その個体を見て判断してください。

    部品が、本当に無い

    https://kuruma-dna.com/sn

    価格帯としては、動く個体でも高額にはなりにくい一方、程度の良い個体はほとんど市場に出ません。「安いから買える」ではなく「出てこないから買えない」というのが、この車の実情です。

    2代目プレリュードで最も現実的な壁は、部品供給です。

    新車の販売台数がそこそこあった車ですが、40年が経ち、リビルト部品も中古部品も、そして部品取り車そのものが入手困難になっています。専用部品が壊れた場合、「探す」のではなく「出てくるのを待つ」ことになります。

    だから購入時のチェックは、部品の欠品確認が中心になります。リトラクタブルの機構、内装のトリム、メーター、エンブレム、モール類。欠けている個体は、その部分が永久に欠けたままになる可能性があると考えてください。

    同時に、この車を扱ってくれる工場のあてがあるかどうかも重要です。旧車を見慣れた整備工場と付き合えるかどうかで、維持のしやすさがまるで変わります。

    ホンダ車を長く見ている工場であれば、この年代の癖を知っています。逆に、輸入車専門店や新しい車ばかり扱う店では、部品の当たりも付きません。買う前に、預ける場所を決めておくのがこの車の鉄則です。

    リトラクタブルと、電装

    https://kuruma-dna.com/ba4

    この年代の電装で厄介なのは、症状が間欠的に出ることです。試乗のときは動いていたのに、翌週動かなくなる。だから購入時には「いま動くか」だけでなく、配線や接点に手が入った記録があるかを確認してください。

    リトラクタブルヘッドライトは、この車の象徴であり、同時に可動部です。モーター、リンク、そしてその取り付け部。動作の左右差、異音、途中で止まる症状がないか、必ず何度か開閉して確認してください。

    電装全般も40年ぶんの経年で来ます。配線の被覆、接点、スイッチ類。パワーウィンドウやワイパー、灯火類をひととおり動かしてみて、動かないものがあればその先を疑ってください。

    特にリトラクタブルは、片側だけ動きが遅い、開いてから戻らない、といった症状が出ます。モーター単体で直る場合もあれば、リンクの摩耗や配線の劣化が原因のこともあります。試乗中に何度か開閉して、再現性を確かめてください。

    現車確認で見るべきポイント

    プレリュード(AB/BA1)
    画像:Spanish Coches/CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
    • 錆とモノコック:フロア、リア足まわり取り付け部、フェンダー内側、サイドシル。最優先
    • リトラクタブルの作動:左右差、異音、途中停止
    • 専用部品の欠品:内装トリム、メーター、モール、エンブレム
    • 電装:窓、灯火、ワイパー、各スイッチ
    • エンジン:始動性、アイドリング、オイル漏れ。B20A搭載車ならなおさら記録を見る
    • 記録簿と来歴:40年ぶんの履歴が分かる個体は、それだけで価値がある

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    プレリュード(AB/BA1)
    画像:Spanish Coches/CC BY 2.0(Wikimedia Commons)

    向いている人は、この形が好きな人です。低いボンネットとリトラクタブル、そして当時のホンダが作った端正な内装。80年代の空気が凝縮された造形で、これを目的に探すなら他に代わりはありません。部品を待つ根気と、預けられる工場が前提になります。

    置き場所も重要です。リトラクタブルヘッドライトとFRP以外の外装は、紫外線と雨で確実に傷みます。屋根のある場所を確保できるかどうかで、この車の寿命は変わります。

    試乗では、低速でのステアリングの手応えと、直進時の落ち着きを見てください。40年ぶんのブッシュとステアリング系の摩耗は、まっすぐ走らせるだけで分かります。

    やめた方がよい人は、走りを求める人です。2代目プレリュードの価値は雰囲気と設計の面白さにあり、動力性能そのものは現代の基準では穏やかです。速さを求めるなら、同じホンダでもっと現実的な選択肢があります。

    結局、AB/BA1の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/ba8

    錆が軽く、専用部品が揃っている個体なら買いです。 ただし、その条件を満たす個体が市場に出てくること自体が稀になっています。

    2代目プレリュードは、ホンダが「合理性では説明できないもの」に本気を出した最初の成功例でした。その空気ごと残っている個体は、これから増えることはありません。

  • シビック タイプR ユーロ(FN2)の中古車ガイド【限定販売の希少車を、部品の視点で選ぶ】

    シビック タイプR ユーロ(FN2)の中古車ガイド【限定販売の希少車を、部品の視点で選ぶ】

    イギリスのスウィンドン工場で作られ、日本には限定で入ってきた3ドアのタイプR。FN2シビック タイプR ユーロは、国内のタイプRの系譜の中でも異質な存在です。

    そして中古で買うとき、この「異質さ」がそのまま難しさになります。壊れる確率より、直せるかどうかが問題になる車だからです。

    構成を押さえておきます。エンジンはK20系の2.0L自然吸気で、変速機は6速MT。骨格は欧州で開発された3ドアハッチで、リアサスペンションは日本仕様のFD2と違いトーションビーム。日本のタイプRとは、成り立ちから別物です。

    最大の論点は、部品が出るかどうか

    シビック タイプR ユーロ(FN2)
    画像:先従隗始/CC0(Wikimedia Commons)

    FN2は2007年に登場し、日本での限定販売も2010年前後です。つまりいま買うなら15年落ち前後になります。この年式で来るものは、だいたい決まっています。

    国内に入ってきた台数が限られるため、購入を検討するなら在庫が出た時点で動く必要があります。条件を絞って待つより、程度の良い個体を見つけたら現車を見に行く、という進め方が現実的です。

    点火系とインジェクター。 プラグ、コイル、そしてインジェクターの詰まり。アイドリングの不安定や、高回転での息つきとして出ます。

    オルタネーターとスターター。 どちらも経年で寿命が来ます。始動時の音、アイドリング時の電圧の落ち込みを試乗で確認してください。

    冷却系。 ラジエターホースの亀裂や滲み。K20は高回転を多用するエンジンなので、冷却系の手抜きは致命傷につながります。

    これらは「壊れる」というより「順番が来る」ものです。購入価格に加えて、初年度に整備費を積んでおくのが現実的です。

    優先順位をつけるなら、まず冷却系、次に点火系、そのあとに充電系です。冷却系の不調はエンジン本体に波及しますが、点火系や充電系は交換で戻ります。予算が限られるなら、この順で手を入れてください。

    加えて、タイヤとブレーキも見ておきましょう。タイプRという性格上、前オーナーが攻めた使い方をしていれば、ローターとパッドは相応に減っています。

    生産時期による電装のリコール

    https://kuruma-dna.com/fk2

    加えて、この年代のホンダ車で共通して見ておきたいのがゴム類です。エンジンマウント、サスペンションのブッシュ、ドライブシャフトのブーツ。どれも15年で硬化し、乗り味と異音に出ます。タイプRの硬さと、ブッシュが抜けた不快さは別物なので、試乗で区別してください。

    平成21年10月から平成22年10月の期間に生産された個体には、製造時に電気配線を傷つけていたことに起因して、ヘッドライトやフォグランプなどが点灯しなくなるおそれがあるとしてリコールが出された経緯があります。

    該当する時期の個体を検討するなら、対策済みかどうかを販売店に確認してください。実施記録が残っていれば安心材料になります。

    エンジンの状態は、キャップ裏で分かる

    https://kuruma-dna.com/fd2

    もうひとつ、冷間始動時のVTECの切り替わりも確認しておきましょう。高回転域で切り替わる機構なので試乗では確かめにくいのですが、切り替わったときに明確な音と力の変化があるかどうかは、安全な速度域でも判断できます。

    K20系は、まともに管理されていれば非常に頑丈なエンジンです。逆に言えば、管理が悪い個体は目に見えて傷んでいます。

    いちばん手っ取り早いのは、オイルフィラーキャップを開けて裏側とエンジン内部を覗くことです。ヘドロ状のスラッジが付いているようなら、その先で焼き付きなどの高額修理が待っている可能性があります。オイル管理を怠った高回転型エンジンは、あとから取り返せません。

    あわせて、記録簿でオイル交換の頻度を確認してください。タイプRという性格上、回されてきた車です。回すこと自体は問題ありませんが、回したうえで管理されていたかどうかが決定的に効きます。

    高回転を多用する車では、オイル交換の「距離」より「使い方」が効きます。サーキット走行歴があるなら、その前後で交換されているかを確認してください。記録簿にサーキット走行の記述はありませんが、交換の間隔が不自然に短い時期があれば、そういう使い方をしていた可能性があります。

    FD2とどちらを選ぶか

    https://kuruma-dna.com/fk8

    価格面でも差があります。FD2は玉数が多く選びやすい一方、人気ゆえに底値では買えません。FN2は台数が少ないぶん、程度と価格の組み合わせが極端になりがちです。FN2は「見つけたときに決められるか」が勝負になります。

    国内のタイプRとしては、同時期に4ドアのFD2があります。FD2のほうが台数が多く、部品も出やすく、サーキットでの性能も一段上です。「タイプRの走りが欲しい」だけなら、FD2のほうが合理的です。

    それでもFN2を選ぶ理由があるとすれば、この車の成り立ちそのものでしょう。欧州のホットハッチとして設計され、日常での快適性や質感を残したまま、タイプRを名乗った。乗り味も内装の雰囲気も、FD2とは別の車です。

    つまりFN2は、性能で選ぶ車ではなく、性格で選ぶ車です。ここに納得できるかどうかが、購入判断の中心になります。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/ek9

    • エアコン:最大冷房での冷え、コンプレッサーの作動音。交換記録があれば大きな加点
    • オイルフィラーキャップの裏:スラッジの有無。最優先で見る
    • リコールの実施記録:平成21年10月〜22年10月生産の個体は電装のリコール対象の可能性
    • 始動と充電:セルの回り方、アイドリング時の電圧、警告灯の履歴
    • 冷却系:ホースの硬化と亀裂、リザーバータンクの液量と色
    • 細かい専用部品:ミラー格納、フォグランプの変色、テールゲートダンパーの抜け
    • 記録簿:オイル交換の頻度。無い個体は避ける

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/fl5

    維持費としては、2.0Lで自動車税は3万9500円の区分。ハイオク指定で実燃費は街乗り9〜11km/L程度。タイヤは18インチで、タイプR向けの銘柄を選べば負担は小さくありません。それでも国産スポーツとしては、維持しやすい部類です。

    向いている人は、この車でなければ意味がない人です。日本のタイプRとは別の思想で作られた3ドアハッチで、しかも国内では限られた台数しか入っていません。希少性と成り立ちに価値を感じ、部品探しも含めて楽しめるなら、代わりはありません。

    やめた方がよい人は、確実に長く乗りたい人です。部品供給の細さは、努力では埋まりません。同じ予算でタイプRの走りを求めるなら、FD2のほうが安心です。

    結局、FN2の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/eg6

    買ったあと最初にやることとしては、エアコンの動作確認(夏でなくても最大冷房で回す)、点火系の状態確認、そして冷却系のホース類の点検。この3つを最初に済ませておけば、突然止まる可能性はかなり下がります。

    整備記録があり、エアコンに手が入っていて、部品を探せる店とつながれるなら買いです。 逆に、そのどれも無い状態で価格だけを見て買うと、動かせない期間の長い車になりかねません。

    FN2は、ホンダが欧州で戦うために作ったタイプRです。日本では少数派だったこと自体が、いまとなっては価値になっています。

  • S2000とは

    S2000は、ホンダ創立50周年という理由がなければ成立しなかったクルマです。

    1999年に登場したAP1は、当時の量産エンジンとして異常な仕立てでした。2.0LのF20C型は自然吸気で250PS、許容回転数は9000rpm。1リッターあたり125PSという値は、レース用ではない市販車として突出しています。骨格にはX-BONEフレームと呼ばれる高剛性の構造を与え、開いた屋根でも歪まないようにしました。

    エンジンを前車軸より後ろに置くフロントミッドシップ配置で、前後重量配分はほぼ50対50。変速機は6速MTのみです。オープンカーでありながら、優雅に流すための道具ではありませんでした。

    2005年からのAP2では、排気量が2.2LのF22C型へ拡大されます。最高回転数は8200rpmへ下がり、代わりに中回転域のトルクが増えました。速さの絶対値ではなく、扱いやすさに寄せた変更です。初期型で指摘されていた限界域の唐突さも、足まわりの見直しで穏やかになりました。

    そして2009年、後継を出さないまま生産を終えます。この構成のクルマを新しく企画するのが難しくなった、という以上の説明は必要ないでしょう。

    AP1からAP2まで。S2000は、記念という名目がなければ通らない企画が、実際に通ってしまった記録です。

  • シティターボとは

    シティターボは、実用車に過剰なものを積むというホンダの悪癖が、最もよく出たクルマです。

    1983年のAA、シティターボIIは通称ブルドッグと呼ばれました。もとは背の高い実用的な小型車です。そこへターボと空冷式インタークーラーを与え、フェンダーを膨らませ、足まわりを固める。実用性のために作られた寸法を、走るためだけに作り替えてしまったわけです。

    いま見ると異様なのは、この改造がメーカー自身の手で、正規の商品として行われたことです。バブル前夜の日本には、こういう振り切り方を許す空気がありました。

    その系譜が現代に戻ってきたのが、2026年のSuper-ONEです。軽自動車規格の電気自動車をベースにしながら、ホットハッチとして仕立てる。動力の作り方はまったく違っても、「実用の枠に収まる寸法で、過剰なものを積む」という発想は同じです。

    AAからSuper-ONEまで。この系譜は、ホンダという会社の悪ふざけが本気になる瞬間の記録です。

  • N-ONEとは

    N-ONEは、売れる軽自動車の作り方から一歩外れたホンダの答えです。

    いまの軽自動車で数が出るのは、背の高いスライドドアの車です。ホンダもN-BOXでその答えを出し、圧倒的な販売台数を得ました。にもかかわらず2012年、JG1/JG2として登場したN-ONEは、背の低い丸目のハッチバックでした。参照したのは1967年のN360です。

    売れ筋から外れた形を選んだのは、Nシリーズを台数だけのブランドにしないためでしょう。実際、走りの素性はよく、ターボ車には手応えのある性格が与えられています。

    2020年のJG3/JG4では、外観がほとんど変わりませんでした。ヘッドライトの形も基本のシルエットも、意図して引き継いでいます。中身は骨格も足まわりも刷新されているにもかかわらず、です。ロングライフデザインを掲げ、見た目を変えないことを価値にした判断でした。

    そしてRSには、軽自動車として希少になった6速MTが残されています。数が出る仕様ではありません。それでも用意するところに、この車の立ち位置がよく出ています。

    JG1からJG3まで、2世代。N-ONEの歴史は、いちばん売れる形が正解とは限らないという主張の記録です。

  • アコード ユーロRとは

    アコード ユーロRは、実用セダンにタイプRの中身を移植した異端児です。

    2000年のCL1は、家族向けの4ドアセダンに、2.2LのH22A型を220PSまで高めて積み込みました。ヘリカルLSD、専用の足まわり、レカロシート、そして5速MTのみという構成。後席もトランクもあるのに、中身は完全にスポーツモデルです。

    なぜこんな車が成立したのかと言えば、当時のホンダに「セダンでも走りで選ばれるはずだ」という信念があったからでしょう。実際、この種のクルマを求める層は確実に存在しました。

    2002年のCL7では、エンジンがK20A型へ替わります。出力は同じく220PS、6速MTを組み合わせ、車体の剛性と快適性も上がりました。結果として、これが日本市場における最後の自然吸気VTECセダンの一つになります。

    以後、この価格帯のセダンは走りではなく快適性と燃費で語られるようになりました。市場が変わったのであって、車が悪かったわけではありません。

    CL1からCL7まで、2世代。アコード ユーロRの歴史は、実用車に本気の走りを入れるという商売が成立した、最後の時期の記録です。

  • インテグラタイプRとは

    インテグラタイプRは、FFスポーツの頂点を定義したクルマです。

    1995年のDC2は、いま振り返っても異常な仕立てでした。1.8LのB18C型は、吸排気ポートを手作業で磨き上げ、8000rpmを超えて回る。車体側では鋼板の追加による補強、遮音材の削減、専用のヘリカルLSD。量産車の枠内で、これだけの手数を掛けた例はそう多くありません。

    その結果として得られたのは、絶対的な速さというより、前輪駆動でどこまで気持ちよく曲がれるかという到達点でした。以後、FFスポーツはこの車を基準に語られるようになります。

    2001年のDC5は、その続編として難しい立場に置かれました。K20A型は220PSに達し、車体も大きく、装備も現代的になっています。数値だけなら明らかに進歩しているのに、DC2の粗削りな手応えを求める人からは物足りないと言われました。洗練は、この種のクルマでは必ずしも褒め言葉になりません。

    DC2からDC5まで、2世代。インテグラタイプRの歴史は、「速さ」と「気持ちよさ」が同じものではないと教えてくれる記録です。

  • NSXとは

    NSXは、スーパーカーに「毎日乗れること」を持ち込んだクルマです。

    1990年のNA1が登場するまで、この価格帯のミッドシップは、視界が悪く、暑く、壊れやすいのが当たり前でした。ホンダはそこへ、量産車として初めてのオールアルミモノコックと、戦闘機の風防を参考にした前方視界、そしてVTECを備えるC30A型V6を持ち込みます。速さの数字だけならもっと速い車はありました。それでも評価されたのは、性能と実用性を同時に成立させたからです。

    この一台がフェラーリの作り方まで変えたと言われるのは、誇張ではありません。壊れずに毎日乗れるという条件が、スーパーカーの評価軸に加わったのはこの世代からです。

    2016年のNC1は、その思想を現代の技術で組み直しました。V6ツインターボに3基のモーターを組み合わせ、前輪を左右独立したモーターで駆動する。曲がるための駆動力配分を電気で作るという答えは、初代とは正反対の手法でありながら、目的は同じです。誰が乗っても速く、そして扱える。

    NA1からNC1まで、2世代。NSXの歴史は、ホンダが「スーパーカーとはこうあるべきだ」と二度提案した記録です。