M2の歴史は、M2と名乗らなかった一台から始まります。
歴代2世代を型式で追うと、前身のE82、初代F87、2代目G87へ、BMWがこの小さなクーペを本流のMとして認めていく過程が見えてきます。
2011年のE82型1シリーズMクーペ、通称1M。3.0L直6ツインターボのN54型は340PS、変速機は6速MTだけでした。エンジンは135i系をM向けに仕立て、足まわりやディファレンシャルにはM3の部品を使う。専用設計ですべてを揃えるのではなく、兄たちの持ち物を短い1シリーズへ押し込んだクルマです。
ところが、その寄せ集めが熱狂を生みました。M3より小さなクーペにも、本物のMを求める人がいる。その事実を受けて2016年に登場したのが、初代F87型M2です。
最初のN55型直6ターボは370PSで、まだM3/M4とは別の心臓でした。それが2018年のCompetitionでは、兄と同系統のS55型へ換装されて410PSに。2020年のCSでは450PSまで届きます。一代の途中で、親しみやすいMの入口から、兄と同じエンジンを持つ凝縮版へ変わったわけです。
2023年の2代目G87型M2では、ついに順番が逆転します。M3/M4と同系統のS58型を最初から搭載し、最高出力は登場時の460PSから2024年に480PSへ。後輪駆動と6速MTも残しました。もう「兄から心臓を借りた弟」ではありません。
ただし、その代償として全長は伸び、車重は1.7トンに達しました。M2を「小さくて軽いM」と説明することは、ここで難しくなります。
2025年のG87型M2 CSは、その矛盾をさらに押し進めます。S58型は530PSまで高められ、約30kgを削った一方、変速機は8速Mステップトロニックだけ。6速MTを残す標準M2と、速さのためにMTを手放したCSで、同じM2の役割が分かれました。
1MからF87、G87へ。最初は手持ちの部品を小さな器へ押し込んだクルマでした。いまでは、その器にM3/M4と同じエンジンが最初から用意されます。M2の歴史は、小さなMが本物になった記録ではありません。小さなMこそ本流のひとつだったと、BMW自身が認めていく記録です。
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