M2 / CS – G87【Mの末弟が背負った、最後の純エンジン世代という重荷】

BMWのMモデルで、いちばん小さくて、いちばん尖っていて、いちばん「これが最後かもしれない」と囁かれている車。

それがG87型M2です。

そしてその頂点に置かれたCSは、単なるハードコア仕様ではなく、ピュアエンジンMカーの最終到達点としての意味を帯びています。

M2という存在の特殊性

M2 / CSのエクステリア
画像:Yu Chu Chin/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons

M2は、Mモデルのラインナップの中では末弟にあたります。2シリーズクーペをベースにM社が仕立てたコンパクトな高性能車で、M3やM4より小さく、軽く、そして安い。ただ、「安いM」というだけの存在ではありません。

歴代のM2には、常に「小さいからこそできる走りの純度」を求めるファンがついてきました。初代F87はN55系の直6ターボで登場し、後にS55エンジンを積むM2コンペティションへ進化。さらにCSが追加されて、短い生涯のなかで急速に評価を高めた車種です。

つまりG87型M2は、その期待を一身に背負った2代目ということになります。しかも今度は、ベースとなる2シリーズクーペ自体がCLARプラットフォームに移行し、車格がひとまわり大きくなった。ここに最初の論点があります。

S58エンジンという選択の意味

https://kuruma-dna.com/e82-1m

G87型M2の心臓部は、S58型3.0L直列6気筒ツインターボです。これはM3(G80)やM4(G82)と同じユニット。つまり、M2はもはや「格下のエンジンを積んだ弟分」ではなく、兄貴たちと同じ心臓を持つ存在になりました。

G87型M2は登場時に最高出力460PS、最大トルク550Nmを発生し、2024年の改良で480PSへ向上しました。先代M2コンペティション(S55・410PS)から大幅な上乗せですが、数字だけで終わらせると本質を見落とします。

S58は、BMWのM社が現行世代の直6ターボとして開発した集大成的なエンジンです。M3やM4ではこのエンジンにxDrive(四駆)を組み合わせる選択肢もありますが、M2は後輪駆動のみ。ホイールベースが短い後輪駆動車に460PSを載せるという判断は、かなり割り切った設計思想です。

トランスミッションは6速MTと8速ATの2本立て。MTを残したことは、この車がどういう層に向けて作られているかを雄弁に語っています。

大きくなったボディと、変わった立ち位置

M2 / CS
画像:Wikisympathisant/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons

G87で避けて通れないのが、ボディサイズの拡大です。全長4,580mm、全幅1,887mm。先代F87と比べると全長で約120mm、全幅で約30mm大きくなっています。ホイールベースも伸びました。

これは2シリーズクーペ自体のプラットフォーム変更に起因するもので、M2だけが太ったわけではありません。ただ、M2の魅力が「コンパクトなMカー」にあったことを考えると、この拡大は賛否が分かれるポイントでした。

車重も約1,700kgに達しており、先代比で増加しています。パワーウェイトレシオは改善しているものの、「軽快に振り回せるM」というイメージからは少し遠ざかった印象があるのも事実です。

一方で、トレッドの拡大やサスペンションジオメトリの見直しにより、高速域での安定性と限界域のコントロール性は明確に向上したとされています。要するに、ヤンチャな弟分から、実力のある中堅へとキャラクターが変わったわけです。

CSが意味するもの

M2 / CS
画像:MrWalkr/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons

2025年5月に発表されたM2 CSは、G87型M2の頂点に位置する限定モデルです。標準M2よりも、サーキットでの速さへ明確に軸足を移しています。

S58型直6ツインターボは530PS・650Nmまで高められました。2024年改良後の標準M2より50PS、50Nm上乗せされ、M3/M4 CompetitionのxDrive仕様と同じ最高出力に達しています。

変速機は8速Mステップトロニックのみで、6速MTは選べません。標準M2がMTを残す一方、CSは変速速度とラップタイムを優先したわけです。

約30kgの軽量化には、CFRP製のルーフ、専用リアディフューザー、ダックテール一体型トランクリッド、センターコンソールなどが使われました。車高も8mm下げられ、足まわりと制御系には専用セッティングが施されています。

30kgという削減幅だけを見ればCSLほど極端ではありません。ただ、530PS、低められた車高、専用シャシー制御、カーボン部品を組み合わせ、標準M2より明確にサーキットへ寄せたモデルです。

電動化前夜のMカーとして

M2 / CS
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G87型M2、そしてM2 CSを語るうえで外せないのが、電動化という時代の文脈です。BMWはすでにiX M60やi4 M50といった電動Mモデルを展開しており、次世代のM3やM4は電動化される可能性が高いと見られています。

つまり、S58エンジンを積む現行Mモデルは、純粋な内燃機関だけで走る最後の世代になるかもしれない。M2 CSは、その中で現行M2世代の最軽量モデルです。

この文脈を知ると、M2 CSの530PSという数字や、MTではなく8速ATに絞った判断が、単なる商品企画を超えた意味を持ちます。M社は、エンジンで走るM2の速さを、ドライバーの操作よりラップタイム側へ振り切った。そう読むこともできます。

もちろん、BMWが今後どのようなパワートレイン戦略を取るかは確定していません。ただ、M2 CSが2025年に登場し、直6・後輪駆動という従来の骨格を保ったまま、現行M2の頂点を示したことは事実です。

末弟が背負ったもの

https://kuruma-dna.com/a90

M2は、Mモデルの中でもっとも手が届きやすく、もっとも趣味性が高い車として支持されてきました。G87型ではボディが大きくなり、パワーが上がり、価格も上がった。先代のような「やんちゃな小型M」とは少し違う車になったのは事実です。

しかし、S58エンジン、後輪駆動、そして標準M2に残された6速MT。この組み合わせが現行車として手に入ること自体が、すでに特別な意味を持っています。8速ATだけに絞ったM2 CSは、その速さの到達点です。

速さだけなら電動パワートレインがいずれ凌駕するでしょう。

でも、エンジンの回転上昇と右足の踏み込みが直結する感覚、シフトレバーを叩き込む手応え、排気音の変化。

そうした体験を凝縮した最後の世代として、G87型M2とCSは記憶されることになるはずです。

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