四枚ドアで「最速」を更新したFD2
2007年3月30日、ホンダは3代目シビック Type RとしてFD2を送り出します。
赤バッジ初の4ドアセダンながら、2.0 ℓ NA 225 ps・クロス6速・専用ボディ強化で筑波1分08秒台を刻み、「実用車でサーキットを制す」という前代未聞のコンセプトを実現。
街では家族を乗せ、週末はレースで勝つ…そんな二面性が走り好きの心を射抜き、歴代Type Rの中でも屈指の熱狂を生みました。
開発ストーリー「セダンType Rへの賭け」

EP3が欧州生産だった反省から、開発責任者・假屋満氏は「日本市場が望むType R」を掲げ、企画段階でセダン案を採用しました。
理由は二つあります。
まず一つ目としては最新シビック(FD系)のプラットフォームがセダン専用だったということです。
そして二つ目、これはセダンとなった根本理由ですが、衝突・剛性規制でハッチバックの軽量化が難しくなったことです。
ホンダは「ドアが2枚増えてもEK9を超える操縦性」を目標に、シーム溶接+高張力鋼を強化しつつ装備を徹底軽量化します。
開発最終テストで筑波を1分08秒3で周回し「これなら赤バッジを付けられる」と量産決定が下った。
K20A改。自然吸気VTECの集大成

日本専用としてK20AはNSX譲りの手研磨ポートを継承し、圧縮比11.7、許容回転8,400 rpm。
最高出力225 ps/8,000 rpm、最大トルク21.9 kg m/6,100 rpmを発揮し、量産NA 2.0 ℓとして世界最高峰の比出力を記録します。
ドライブバイワイヤのスロットルと高圧縮に合わせ、クロス6速MTは1〜3速を極端に詰め、VTEC切替5,800 rpm→パワーバンド継続という怒涛の加速を実現したのです。
「硬く・低く」を追求したボディ&サス

ボディはシーム溶接をノーマル比2.2倍に増し、補強パネルを70 点追加。さらにアルミボンネットと薄型ガラスで車重1,270 kg(装備込)に抑えます。
サスペンションは前輪ストラット、後輪リアダブルウィッシュボーンながら、前後キャンバーを増し、18 インチRE070とブレンボφ320 mmで武装。
開発ドライバーは「踏んで曲げるレーシングFF」と表現し、市販車テストでもコーナリングGはランエボⅨ並みを記録しています。
モータースポーツでは最速FFを証明
2007年スーパー耐久ST4クラスにFD2が投入され、デビューウィン含む年間5勝。
筑波アタックではCARトップ誌計測1分08秒33を叩き出し、同時期のS2000やWRX STiを上回る怒涛の記録を叩き出します。
海外でもマレーシアSEPANG 12 H耐久でクラス優勝し、4ドアでもFF最速を疑う余地がなくったのです。
FD2が残したDNA
当時の熱狂とストリートカルチャーを象徴するのは、まず「ファミリーカーでレースに勝てる」という衝撃でした。
子育て世代までも巻き込んだこのコンセプトは爆発的な支持を集め、納車待ちは半年に達するほどの大ヒットとなります。
シビック最後のNAエンジン

加えて忘れてはならないのが、FD2が「最後の高回転NAシビック Type R」であったという事実。
排ガス規制とダウンサイジングの波により、後継FK2以降はターボエンジンへ移行していきますが、FD2のK20Aは吸気音とメカニカルノイズを余すことなく響かせる純粋な高回転フィールを守り抜いたのです。
「実用と最速」を両立した究極の4ドアFF
FD2は、ファミリーセダンの皮をかぶりながら、高回転NAと世界トップクラスの剛性で「公道とサーキットを地続きにする」というType R哲学を極限まで突き詰めました。
赤バッジはハッチバック専売という先入観を打ち破り、FF最速の称号を更新。現行モデルがターボ化・5ドア化してもなお、「NA高回転×超硬シャシー」という原点を思い出させる存在として輝き続けています。
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