ランサーエボリューションVIII – CT9A 【第三世代ランエボの本命】

エボVIIが「大きくなった新世代ランエボ」なら、エボVIIIはその土台を本気で仕上げにきた一台となります。

2003年1月に登場したランサーエボリューションVIIIは、三菱公式でも進化点としてスーパーAYCの採用が明記されているモデルで、第三世代ランエボの中でも「曲がりの質」をはっきり引き上げた存在となります。  

エボVIIでACDを得て、四駆の前後制御はすでに大きく進んでいました。

そこへエボVIIIは、後輪左右の制御をさらに強化したスーパーAYCを持ち込み、加えて6速MTまで投入してきた。

踏める、曲がる、立ち上がれる。その一連の流れを、より高い精度でまとめ上げたのがエボVIIだったのです。  

「制御の完成度」を上げるアップデート

エボ8は見た目だけなら、エボ7の発展版に見えます。

実際、ベースは同じCT9A世代で、4G63ターボも引き続き搭載しています。

しかし中身はかなり本気。

三菱の発表資料では、車体前部・上部やバネ下を中心に軽量化を進め、エンジン、空力、冷却、サスペンションを細かく見直したとしています。さらにGSRと17インチRSにはクロスレシオの6速MTを標準採用し、走りのつながりそのものを磨いてきました。

空力の考え方も面白い。

一見するとエボ7よりおとなしく見えますが、それは妥協ありませんでした。webCGが開発者取材をもとに伝えているように、フロント開口部やボンネットまわり、トランク後端の処理は、空力シミュレーションや重量増との兼ね合いを踏まえた結果であり、見た目よりも速度追求を優先した判断でした。

エボVIIIは派手さを足したのではなく、第三世代を速い形へ整理した結果なのです。

×「もっと曲がる」⚪︎「曲がりながら踏める」

エボVIII最大の見どころは、やはりスーパーAYCでしょう。

従来AYCをさらに進化させたこの機構は、リア左右の駆動力配分能力を大きく高め、旋回性能とトラクション性能の両立を狙ったものでした。

モーターマガジン系の記事でも、従来AYC比で後輪左右のトルク移動量を約2倍に高めたことが紹介されています。要するにエボVIIIは、ただノーズが入るだけでなく、向きを変えたあとにより強く前へ出せる四駆になりました。

しかもそれは、ACDとの組み合わせで効いてきます。

エボVIIで始まった前後制御に、エボVIIIでは後輪左右の制御強化が重なりました。後年の三菱系解説でも、スーパーAYCがクルマを安定させつつ旋回力をコントロールしやすくしたことは大きな転機だったと振り返られています。

エボVIIIはこの時点で、ランエボをパワーのある4WDから挙動を作り込める4WDへさらに進めていたのです。

太古から受け継がれた4G63もしっかり改良

エンジンも抜かりないです。

4G63ターボは280psを維持しつつ、最大トルクは40.0kgmへ向上。ターボや冷却系の見直しで3000〜5000rpmの厚みを強め、ピストンやコンロッドの高強度化、軽量化まで行っています。

派手な数字競争ではなく、実際に使う回転域を太らせて速くする、いかにもランエボらしい進化でした。

「ついに6速化した」ではなく、「つなぎ方を変えた」

エボVIIIで初採用された6速MTも重要です。

GSRと17インチRSに入ったこのクロスレシオ6速は、1速で発進加速を重視しつつ、2〜5速をクロースさせ、6速をハイギアードに設定する構成だった。つまり単に段数を増やしたのではない。加速のつながりと高速域の使い方を両立させるための6速化だった。  

この変更は、エボVIIIの性格をよく表しています。

エボVIIで作った新世代シャシーに対し、エボVIIIは制御も変速も一段きめ細かくしてきました。乱暴に速いのではなく、速さをより細かく運べるようにしたのです。

だからエボVIIIは、数字以上に「完成度が上がった感覚」で評価されやすいわけですね。

見た目に比べ思想はむしろ過激に

エボVIIIの面白さは、開発側が見た目より中身を優先していたところにも出ています。

webCGの取材では、エボ7から消えたように見える開口部処理やボンネットインレット、デルタウィッカーについて、開発者インタビューの結果として「最新の空力シミュレーションや空力効果と重量増とのバーターを考慮した結果、より得策と思われる方法を選んだ」と説明されています。

これはかなりエボらしい。見栄えより効く方を取る、ということです。  

また、三菱の四輪制御ヒストリーでは、エボVII開発時からボディ剛性を重視し、ニュルブルクリンクでの実走テストを重ねて進化の土台を磨いていたことが語られています。

エボVIIIはその流れの上で、制御と車体をさらに噛み合わせてきたモデルと見ていいでしょう。

第三世代が「本気で速く曲がる」ことを覚えた

エボVIIは大きな転換点でした。

しかしエボVIIIは、その転換をちゃんと実力へ変えたモデルとなります。

スーパーAYC、6速MT、改良された4G63、詰め直された空力と軽量化。どれも単体では地味に見えるかもしれないですが、全てが速さの質を上げる方向で揃っています。

エボVIIIは第三世代ランエボの本命であり、エボ9へ続く完成形への助走でもあった。荒々しい四駆ターボのまま、制御と精度でさらに前へ進みました。

その意味でエボVIIIは、ランエボが「ただ速い」から「狙って速い」へ進化したことを、いちばんわかりやすく示す一台だったのです。  

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です