メガーヌRS – BBM5P【究極の宿命を背負ったメガーヌ】

「FF最速」という宿命を背負った4代目メガーヌ R.S.

メガーヌ II/III R.S. はワンメイクレースやニュルブルクリンクで華々しい戦績を残し、「ホットハッチのベンチマーク」という称号をほしいままにしていました。

ところが2010年代半ば、CO₂規制強化と衝突基準の改訂で、従来どおりの 2 ℓ ターボ+3 ドア軽量ボディは成り立ちにくくなります。

さらにライバルのシビック Type R が 306 hp に到達し、FF 最速ラップを更新。ルノー・スポールは “軽い+ハード” だけでは勝てない新章に突入したのです。 

5 ドア化と 4CONTROL

2017 年フランクフルトショーで姿を現した 4 代目(通称 Mégane IV R.S.)。

最大の特徴は、ルノーにおける同セグメント初の四輪操舵システム「4CONTROL」を採用したこと。

低速では逆相、高速では同相に切れる後輪が、従来モデルと同等の俊敏さと高速安定性を両立させました。

加えて 5 ドア化により実用性まで引き上げ、「週末サーキット、平日ファミリー」を一台で賄う方向へ舵を切ります。 

アルピーヌ譲りの 1.8 ℓ 直噴ターボ

排気量は 2 ℓ から 1.8 ℓ(M5P)へダウンサイジング。

アルピーヌ A110 と共同開発したユニットはツインスクロールターボと DLC コーティングで高効率化され、標準 280 ps/390 N·m、Trophy 系は 300 ps/420 N·m を発生します。

エンジン単体で 109 kg と軽量に抑えられたのも、前荷重を減らして旋回性能を稼ぐための執念でした。 

スポールとカップ、そして「Trophy」

シャシーには減衰力を自動調整するハイドロリック・バンプストップが全車標準で組み込まれ、そのうえで用途に応じた3段階のグレードが用意されました。

エントリーの「Sport」(国内呼称:シャシー Sport)は、街乗りでの快適性を最優先しつつ、オープンデフと電子制御トルクベクタリングで軽快なハンドリングを実現します。

中間の「Cup」はスプリングとスタビライザーを約10%強化し、機械式トルセンLSDと2ピース仕様の355 mmブレンボブレーキを追加することで、ワインディングやサーキット走行での耐久性と限界性能を高める設計となっています。

そして最上位の「Trophy」。

Cupをベースに最高出力を300 psへ引き上げ、空力性能を高める専用フロントスプリッターを装着。こうして、普段は街を流しつつ週末はサーキットへ繰り出すユーザーまで幅広くカバーする、絶妙なラインナップが完成したのです。

ニュル 7’40’’100。Trophy-R の衝撃

2019 年、約 1 t(1,305 kg)まで徹底軽量した Trophy-R が登場。カーボンホイール、Öhlins 調整式ダンパー、チタン Akrapovič マフラーで 130 kg 近いダイエットを敢行し、ニュルブルクリンク北コース 20.6 km を 7 分 40 秒 100 で完走。

ホンダ シビック Type R から “FF 最速” の座を奪い返しました。 

「R.S. Ultime」ルノー・スポール最後のメッセージ

しかし 2023 年、モータースポーツ部門は Alpine ブランドへ統合され、「Renault Sport」 名義の市販車は終了。

ラストを飾った Mégane R.S. Ultime は Cup シャシー+300 ps エンジンをベースに、創設年「1976」を示すストライプと 1,976 台限定シリアルを与えられました。

これをもって 20 年近いメガーヌ R.S. の系譜は幕を閉じ、その血統を次世代 EV&Alpine へ託すことになります。 

「軽くて速い」DNA はまだ終わらない

4CONTROL、1.8 ℓ ターボ、電子制御 LSD、そして軽量化に執念を燃やす開発姿勢、これらはメガーヌ IV R.S. が示した新しいライトウェイト思想です。

アルピーヌ A290 や次期ハイパフォーマンス EV にも、この DNA が形を変えて受け継がれるのは間違いありません。

フレンチホットハッチの物語は、まだ次のコーナーを立ち上がったばかりなのです。

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