カテゴリー: メガーヌRS

  • メガーヌ3RSの中古車は買い?【FFホットハッチの最高峰は、内装の脆さを笑って許せるかで決まる】

    メガーヌ3RSの中古車は買い?【FFホットハッチの最高峰は、内装の脆さを笑って許せるかで決まる】

    ニュルブルクリンク北コース、緑の地獄でFF市販車最速を争い続けた、あのメガーヌRSの3代目。

    265馬力の2.0Lターボに6速MT、専用設計のダブルアクスル・ストラットサスペンション。走りの密度だけで言えば、同世代のどのFFホットハッチよりも濃い一台です。

    ただ、この車を中古で買おうとすると、走り以外のところで「えっ、そこ?」という不具合がちらほら顔を出します。致命的ではないけれど、国産車では経験しない類の壊れ方をする部分がある。逆に、心臓部やシャシーはびっくりするほどタフです。

    この記事では、メガーヌ3RSを中古で狙っている人に向けて、何を警戒すべきで、何はそこまで怖くないのかを整理します。

    まず知っておきたい、日本仕様の基本情報

    メガーヌ3RS(型式:ABA-DZF4R)は、2010年12月に日本で発売されました。ボディは3ドアハッチバックのみ。トランスミッションは6速MTだけで、ATの設定はありません。

    2012年7月のマイナーチェンジ(フェーズ2、通称ph2)で、最高出力が250psから265psに引き上げられ、ハンドル位置が左から右に変更されています。つまり、ph1は左ハンドル、ph2は右ハンドルです。これは中古選びで非常に大きな分かれ目になります。

    日本仕様はすべて「シャシーカップ」と呼ばれるスポーツ寄りの足回りで、本国にある快適寄りの「シャシースポール」は導入されていません。レカロ製バケットシートやLSD(リミテッド・スリップ・デフ)は標準装備です。

    限定車も多く、トロフィー、RB7、273トロフィー2、トロフィーS、ファイナルエディションなど、年式ごとにさまざまなバリエーションが存在します。限定車はプレミアム価格がついていますが、基本的なメカニズムはベースのRSと共通です。

    中古で警戒すべき弱点

    さて、本題に移りましょうか。

    メガーヌ3RSの弱点を語るうえで、まず避けて通れないのがインナードアハンドルの破損です。ドアの内側にある取っ手の樹脂部分が割れて、文字通り「もげる」という症状。これはメガーヌ3系全体に共通する持病で、RS以外のグレードでも頻発しています。

    取っ手が取れる〜メガーヌ

    取っ手が折れても走行に支障はないものの、同乗者が困りますし、何より印象が悪い。正規に修理するとドア内張りごと交換になり、部品代だけで約6万円ほどかかります。互換品の社外パーツも出回っていますが、純正の設計自体に無理があるため、交換しても再発の可能性は残ります。

    ドアストラップを後付けして根本対策する人もいるほどで、オーナーの間では「不可避のトラブル」として広く認識されています。中古車を見るときは、ドアハンドルの状態を必ず確認してください。すでに修理済みか、割れかけていないかは重要なチェックポイントです。

    次に気をつけたいのが、エアコンのコンプレッサーです。経年で焼き付いたり、異音が出たりするトラブルが報告されています。特に夏場に壊れるケースが多く、修理費用は部品代・工賃込みで10万円以上になることがあります。RS専用品ということもあり、安価な社外品やリビルト品が見つかりにくいのも痛いところです。

    オルタネーター(発電機)も要注意の補機です。発電時の熱負荷が大きく、経年劣化で発電不良を起こすと、走行中にバッテリーが上がって突然止まるリスクがあります。こちらも交換費用は10万円コースで、社外品の選択肢が少ないのはコンプレッサーと同様です。

    コンプレッサーとオルタネーター、どちらも「壊れたら高くつく補機」ですが、走行距離が進んだ個体ほどリスクは上がります。購入前に交換履歴があるかどうかを確認できると安心材料になります。

    パワーウインドウのトラブルも、ルノー車全般で知られた弱点です。ウインドウレギュレーターの樹脂パーツが破損して、窓ガラスが落ちたまま動かなくなる、いわゆる「窓落ち」。防犯上も実用上も困る症状で、修理には数万円かかります。全席で起こりうるため、試乗時にすべての窓を上げ下げして動作を確認するのが鉄則です。

    パワーステアリングの警告が出るケースも散見されます。「power steering fault」というメッセージがメーター内に表示され、一時的にパワステのアシストが抜ける症状です。電動パワステのセンサーや制御系に起因することが多く、再始動で復帰する場合もありますが、繰り返すようなら修理が必要です。

    内装の質感に関しては、率直に言って国産車やドイツ車の水準を期待してはいけません。樹脂パーツの表面がベタつく、内装の一部が剥がれるといった経年劣化は、フランス車全般に見られる傾向ですが、メガーヌ3でも例外ではありません。走りに全振りした車だと割り切れるかどうかが、この車と長く付き合えるかの分かれ目です。

    また、ドアミラーのウインカーカバーが外れるという、小さいけれど地味に嫌なトラブルも報告されています。走行には関係ないものの、外れたまま走っていると見た目の印象が一気に悪くなります。部品自体は高価ではありませんが、マイナー車ゆえに在庫がすぐ見つからないこともあります。

    シフトの入りについても触れておきます。特に冷間時、5速から4速へのシフトダウンが渋いという声があります。MTオイルの劣化が原因のこともあるため、購入後にMTオイルを交換してフィーリングが改善するケースもありますが、もともとクラッチはやや重めの設計です。試乗時に各ギアの入り具合を丁寧に確かめてください。

    逆に機関部はめちゃくちゃ強い

    弱点ばかり並べてきましたが、メガーヌ3RSには「ここは本当に壊れない」と言える部分がしっかりあります。

    まず、エンジン。2.0L直列4気筒ターボ(F4R型)は、ルノースポールが長年熟成してきたユニットで、基本設計の信頼性は高いです。10万kmを超えても大きなトラブルなく走っている個体が珍しくありません。5年間ノートラブルという報告もあり、パワートレインの耐久性はこの車の大きな安心材料です。

    そしてシャシーとサスペンション。ルノースポール専用のダブルアクスル・ストラットサスペンションは、キングピンオフセットを最小化した独自設計で、FFとは思えない接地感とトラクションを生み出します。この足回りの完成度は、同世代のライバルを明確に上回っています。

    サスペンション自体が壊れやすいという話はほとんど聞きません。

    ブッシュ類の経年劣化による異音は年式なりに出ますが、構造的な弱さではなく、通常の消耗の範囲です。

    6速MTのギアボックスも頑丈です。

    サーキット走行を繰り返すような使い方をしない限り、ミッション本体が壊れるケースは稀です。クラッチの重さは好みが分かれますが、操作フィーリング自体は正確で、ギアの噛み合いがダイレクトに手に伝わる質感があります。

    ブレーキも安心できるポイントです。

    フロントに大径ディスク(340mm)を備え、ブレンボ製キャリパーが装着されています。制動力に不安を感じる場面はまずありません。パッドやローターは消耗品ですが、効きそのものの設計マージンは十分です。

    つまり、メガーヌ3RSは「走りに関わる部分は頑丈で、それ以外の小物や内装、補機類にフランス車らしい脆さが出る」という車です。この構図を理解しているかどうかで、購入後の満足度がまったく変わります。

    現車確認で見るべきポイント

    中古のメガーヌ3RSを見に行くとき、最優先で確認すべきはドアハンドルです。運転席・助手席の内側の取っ手を実際に引いてみて、ガタや割れがないか確かめてください。(明らかにメリつくので慎重に…)

    すでに社外品に交換されている場合は、それはそれで前オーナーが対策済みということなので悪い話ではありません。

    すべての窓を開閉して、パワーウインドウの動作を確認します。途中で引っかかる、異音がする、動きが極端に遅いといった兆候があれば、レギュレーターの劣化が進んでいる可能性があります。

    エアコンは必ず作動させて、冷えるかどうかだけでなく、コンプレッサーから異音が出ていないかを聞いてください。エンジンをかけた状態でボンネットを開け、耳を澄ませるのが確実です。

    試乗では、冷間時のシフトフィーリングを重点的に確認します。各ギアにスムーズに入るか、特定のギアだけ渋くないか。クラッチの重さは仕様なので気にしすぎる必要はありませんが、ミートポイントが極端に浅い・深い場合はクラッチの摩耗を疑ってください。

    メーター内の警告灯も要チェックです。エンジン始動後にパワステやエンジン関連の警告が点灯・点滅しないか、走行中に「チェックインジェクションシステム」などのメッセージが出ないかを確認します。

    整備記録簿があるかどうかは、この車では特に重要です。ルノーディーラーや専門ショップでの定期整備履歴が残っている個体は、それだけで信頼度が一段上がります。逆に記録がまったくない個体は、どんなに安くても慎重になるべきです。

    外装については、RSはフェンダーが標準車より張り出しているため、狭い道での擦り傷が多い傾向があります。サイドシルやリップスポイラーの下側は特に確認してください。板金修理は輸入車価格になりますし、特殊な色の場合は塗装代も嵩みます。

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    メガーヌ3RSに向いているのは、「走りの質に惚れていて、内装や小物の不具合を笑って受け流せる人」です。ドアハンドルがもげても「またかよ可愛いな〜」と自分で直せるくらいの気構えがあれば、この車はとんでもなく楽しい相棒になります。

    維持費についても、ドイツのプレミアムスポーツと比べれば現実的です。オイル交換はディーラーで3万円前後、専門ショップでも2万円前後と国産車よりは高いですが、BMW Mやポルシェのケイマンよりはずっと安く済みます。重大故障の頻度も、しっかり整備された個体であれば低い部類です。

    一方、やめた方がよいのは、「内装の質感や細部の仕上げに国産車レベルを求める人」です。樹脂が割れる、内張りが浮く、カバーが外れる。こうした「走りに関係ない部分の脆さ」がこの車には確実にあります。それを故障と感じるか、フランス車の個性と感じるかで、オーナーライフの幸福度がまるで違います。

    年式選びについて一つアドバイスするなら、2012年以降のph2(右ハンドル・265ps)を狙うのが無難です。右ハンドルは日本での日常使いで圧倒的に楽ですし、細かな改良も入っています。さらに余裕があれば、2016年前後のモデル末期の個体が狙い目です。熟成が進んでおり、初期トラブルのリスクも低くなっています。

    結局、メガーヌ3RSは買いなのか

    結論から言います。弱点を理解したうえでなら、メガーヌ3RSはかなり買いです。

    2.0Lターボ、6速MT、専用サスペンション、LSD。これだけの装備を持ったFFスポーツが、状態の良い中古でも200万円台で手に入る時代は、そう長くは続かないかもしれません。限定車でなければ、まだ現実的な価格帯にあります。

    エンジンとシャシーが頑丈だという事実は、スポーツカーの中古選びにおいて最大の安心材料です。壊れやすいのは補機や内装の小物であって、走りの根幹ではない。この構図は、中古車としてはむしろ健全な部類と言えます。

    ニュルブルクリンクでタイムを刻んだ本気のFFマシンを、日常の足としても使える。そんな贅沢ができるのは、メガーヌ3RSならではです。ドアハンドルのもげやすさや、エアコンの不安と引き換えに手に入る走りの密度は、他のどの車でも代替できません。

    取っ手が取れたとき、「やっぱりフランス車だな」と笑えるなら、この車はあなたのものです。

    ハンコを押しに行きましょう。

  • メガーヌRS – BBM5P【ルノースポールが放った最後にして究極のFF】

    メガーヌRS – BBM5P【ルノースポールが放った最後にして究極のFF】

    「FF最速」という宿命を背負った4代目メガーヌ R.S.

    メガーヌ II/III R.S. はワンメイクレースやニュルブルクリンクで華々しい戦績を残し、「ホットハッチのベンチマーク」という称号をほしいままにしていました。

    ところが2010年代半ば、CO₂規制強化と衝突基準の改訂で、従来どおりの 2 ℓ ターボ+3 ドア軽量ボディは成り立ちにくくなります。

    さらにライバルのシビック Type R が 306 hp に到達し、FF 最速ラップを更新。ルノー・スポールは “軽い+ハード” だけでは勝てない新章に突入したのです。 

    5 ドア化と 4CONTROL

    2017 年フランクフルトショーで姿を現した 4 代目(通称 Mégane IV R.S.)。

    最大の特徴は、ルノーにおける同セグメント初の四輪操舵システム「4CONTROL」を採用したこと。

    低速では逆相、高速では同相に切れる後輪が、従来モデルと同等の俊敏さと高速安定性を両立させました。

    加えて 5 ドア化により実用性まで引き上げ、「週末サーキット、平日ファミリー」を一台で賄う方向へ舵を切ります。 

    アルピーヌ譲りの 1.8 ℓ 直噴ターボ

    排気量は 2 ℓ から 1.8 ℓ(M5P)へダウンサイジング。

    アルピーヌ A110 と共同開発したユニットはツインスクロールターボと DLC コーティングで高効率化され、標準 280 ps/390 N·m、Trophy 系は 300 ps/420 N·m を発生します。

    エンジン単体で 109 kg と軽量に抑えられたのも、前荷重を減らして旋回性能を稼ぐための執念でした。 

    スポールとカップ、そして「Trophy」

    シャシーには減衰力を自動調整するハイドロリック・バンプストップが全車標準で組み込まれ、そのうえで用途に応じた3段階のグレードが用意されました。

    エントリーの「Sport」(国内呼称:シャシー Sport)は、街乗りでの快適性を最優先しつつ、オープンデフと電子制御トルクベクタリングで軽快なハンドリングを実現します。

    中間の「Cup」はスプリングとスタビライザーを約10%強化し、機械式トルセンLSDと2ピース仕様の355 mmブレンボブレーキを追加することで、ワインディングやサーキット走行での耐久性と限界性能を高める設計となっています。

    そして最上位の「Trophy」。

    Cupをベースに最高出力を300 psへ引き上げ、空力性能を高める専用フロントスプリッターを装着。こうして、普段は街を流しつつ週末はサーキットへ繰り出すユーザーまで幅広くカバーする、絶妙なラインナップが完成したのです。

    ニュル 7’40’’100。Trophy-R の衝撃

    2019 年、約 1 t(1,305 kg)まで徹底軽量した Trophy-R が登場。カーボンホイール、Öhlins 調整式ダンパー、チタン Akrapovič マフラーで 130 kg 近いダイエットを敢行し、ニュルブルクリンク北コース 20.6 km を 7 分 40 秒 100 で完走。

    ホンダ シビック Type R から “FF 最速” の座を奪い返しました。 

    「R.S. Ultime」ルノー・スポール最後のメッセージ

    しかし 2023 年、モータースポーツ部門は Alpine ブランドへ統合され、「Renault Sport」 名義の市販車は終了。

    ラストを飾った Mégane R.S. Ultime は Cup シャシー+300 ps エンジンをベースに、創設年「1976」を示すストライプと 1,976 台限定シリアルを与えられました。

    これをもって 20 年近いメガーヌ R.S. の系譜は幕を閉じ、その血統を次世代 EV&Alpine へ託すことになります。 

    「軽くて速い」DNA はまだ終わらない

    4CONTROL、1.8 ℓ ターボ、電子制御 LSD、そして軽量化に執念を燃やす開発姿勢、これらはメガーヌ IV R.S. が示した新しいライトウェイト思想です。

    アルピーヌ A290 や次期ハイパフォーマンス EV にも、この DNA が形を変えて受け継がれるのは間違いありません。

    フレンチホットハッチの物語は、まだ次のコーナーを立ち上がったばかりなのです。

  • メガーヌRS – DZF4R【理屈で話すフランスの狂犬】

    メガーヌRS – DZF4R【理屈で話すフランスの狂犬】

    Mégane III R.S. -since 2010-

    ――「#UNDER8」宣言で“FF最速戦争”を加速させた三代目ホットハッチ

    「8分切るまで帰ってくるな」

    開発棟の壁に書かれたこの合言葉が、ルノー・スポールの社内プロジェクト #UNDER8 の始まりでした。

    メガーヌ3RSの先代「R26.R」という絶対強者

    2008年、先代メガーヌ R26.R がニュル北コース 8分17秒 を刻んで以来、FF勢はこの「壁」を破れずにいました。

    • Opel アストラ OPC : 8分35秒
    • VW シロッコ R : 8分30秒

    いずれも全くと言っていいほど届かず、「最速FF=メガーヌ」の図式は盤石。ルノー側にはわざわざ新型メガーヌ3RSの公式タイムを出す必然性がなかったのです。

    迫るライバルと「8分切り」宣言

    ところが 2013 年頃、VW ゴルフ GTI 系や Seat León Cupra が高出力化で急速に接近。
    翌 2014 年 3 月、León Cupra 280 が 7分58秒4 を叩き出し、ついに「8分の壁」を突破。

    ルノースポール本部に緊急ミーティングが招集され、プロジェクト #UNDER8 が正式に発動されました。

    275 Trophy-R 誕生

    ストレートな解決策は「軽く、強く、速く」。

    パワートレインはECU最適化と吸排気の見直しにより、273 PS / 360 Nmまで高められた最終形態の名機F4Rt。

    続いてアクラポヴィッチ製チタンマフラー、Öhlinsサスペンション、Speedline Turini 鍛造 19inchホイールなど、バイク勢も飛びつく豪華装備…

    極めつけはリチウムイオンバッテリー&後席撤去で 130 kgの大幅ダイエット。結果、2014 年 6 月、7分54秒36 を記録し王座奪回。#UNDER8 の名は達成とともに世界へ拡散しました。

    ホンダ FK2 シビック Type Rの到来

    2015 年夏、ホンダが 2.0L VTECターボを積む FK2 Civic Type-R を投入し、7分50秒63で最速を更新。

    国内外メディアは「日本車がフレンチと独車の牙城を崩した!」と大々的に報道し、日本でも抽選 10 倍超の争奪戦が起こりました。

    そして、ルノースポールはプライドを懸けて最速の名を再び奪い返すべく、メガーヌ4RSの開発が始まります…

    おっと、ここからはメガーヌ4RSのお話ですね。

    メガーヌ3RSのモデル

    2010年、メガーヌIIIクーペをベースに250 PS/340 Nmの2.0 L直4ターボを搭載し誕生したのがRS 250。最もノーマルなタイプとなります。

    先代から受け継いだPerfoHubに加え、より高剛性なシャシーカップ+機械式LSDで「曲がるFF」をさらに深化させました。

    2011年にはブーストアップで265 PSへ強化した「265 Trophy」が登場し、ニュル北コースで8分07秒97を記録して再びFF最速へ返り咲きます。

    そして2014年、Akrapovičチタンマフラー、Öhlins車高調、Michelin Cup 2で武装した275 Trophyと、後席や4WSを削ぎ落し−約130 kgを実現した究極の275 Trophy-Rがデビュー。

    Trophy-Rはニュルを7分54秒36で駆け抜け、「#UNDER8」の公約を果たしたのでした。 

    なぜそんなに速かったのか

    独立ステアリング軸式のフロント足まわりであるPerfoHub。強い加速時でもトルクステアを抑え、フロントの舵の正確さを崩しにくい。

    Trophy系はCupシャシーを軸に、より硬い足、機械式LSD、バイマテリアルブレーキを組み合わせ、吊るしでもサーキットで通用する前輪駆動に仕立てられていました。 

    さらにTrophy-Rでは約100kgの軽量化を実施。リアシート撤去、複合素材バケットシート、遮音材の削減などで公称1280kgまで絞り込み、絶対的なパワーよりもパワーウエイトと旋回性能で速さを作ることに成功したのです。

    シャシー責任者フィリップ・メリメ

    R.S.の開発はサーキット3割、公道7割。 可変ダンパーに頼らず「理想の一点」を突き詰めるからこそ、日常でもサーキットでも矛盾しない。」 

    この哲学は3型で完成形となり、後に四輪操舵を備えた4型へ継承されます。

    主要諸元(275 Trophy-R 2014 EU仕様)

    全長/幅/高 4299×1848×1435 mm

    ホイールベース 2639 mm

    車重 1297 kg

    エンジン F4Rt型 1998 cc 直4ターボ

    最高出力 275 PS/5500 rpm

    最大トルク 360 Nm/3000 rpm

    変速機 6速MT

    タイヤ Michelin Pilot Sport Cup 2 235/35ZR19

    0-100 km/h 5.8 s

    メガーヌ3RSの小話

    • What Car?「Best Hot Hatch」 を2010-2014連続受賞。 
    • 日本では**「273 パックスポール」**(鍛造ホイール&チタンマフラー装着・20台限定)が発売、即日抽選倍率10倍超え。 
    • 公式ハッシュタグ #UNDER8 はTrophy-R発売後もR.S.ファンの合言葉に。 
  • メガーヌRS – MF4R2【ルノーがFFに与えた、むき出しの狂気】

    メガーヌRS – MF4R2【ルノーがFFに与えた、むき出しの狂気】

    ――ホットハッチに“トルクステア殺し”を持ち込んだ張本人

    Mégane II R.S. -since 2004-

    2004年、ルノー・スポールが2代目メガーヌをベースに225 PS/300 Nmの2.0 L直4ターボをねじ込み誕生したのがRS 225。

    当時のFFは強烈なトルクステアが抱えモノでしたが、RSは新開発のダブルアクシスストラット(PerfoHub)で“ハンドルが暴れない”という革命を起こします。

    翌05年に更なる足回り硬化、タイヤ空気圧モニタ廃止などを施した「Cup」パッケージが追加され、06年にはF1二連覇記念で作られた“R26”(230 PS+機械式LSD)が発売されました。

    そして、極めつけは08年のR26.R。

    助手席エアバッグもリアシートも撤去、カーボンボンネット&ポリカ窓で-123 kgのダイエットを敢行し、ニュル北で8分17秒を叩き出してFF最速を名乗り上げました。 

    開発の背景

    2000年代前半、ルノーのラインアップはBセグメントにはクリオRS(それこそクリオV6もこの時期)など刺激的なフレンチホットが揃っていましたが、CセグメントはVWゴルフGTI一強となっていました。

    そこでルノー・スポールの開発陣は「ハンドリング命」を掲げ、ステア軸を分離したダブルアクシス・ストラットを新設計。

    パワートレーンには、後にメガーヌ3RSにて魔改造を施されるF4Rtを225馬力仕様で載せ、ゴルフGTIと差別化する戦略を採りました。

    なぜメガーヌ2RSはここまで速かったのか

    まずは新開発のサスペンション「PerfoHub」。

    ステア軸をハブと分離し、ドライブシャフトのキックバックをシャットアウト。

    結果として大トルクでも舵が乱れず、ブレーキングしながらでも安定して曲がれるようになりました。

    …とは書いたものの、やはり一番は限定モデルに施された魔改造でしょう。

    Cup/R26.Rの足スプリング・スタビ径アップに加え、Brembo4ポット&バイマテリアルRotorを奢り、サーキット熱ダレを防止。

    量より質の軽量化樹脂リアウインドウやカーボンボンネットなど高い位置にある重量物を削ぎ落とすことで、低重心化を達成しながら前後重量配分まで最適化。

    その結果、R26.Rは0-100 km/hを5.9 sで駆け抜け、同世代のシビックType R(FD2)をニュルで約13秒置き去りに。RSというバッジに絶対的速さのイメージを刻みました。 

    次世代メガーヌRSに継承されるハイテク<メカ思想

    「快適性とサーキット性能はトレードオフじゃない。理想的な減衰力ポイントは一本しかないから、可変ダンパーなんか要らないんだ」 

    開発責任者フィリップ・メレメ

    この思想は後のIII・IV型にも受け継がれ、一貫して“固定ダンパー主義”を貫くRSの流儀となります。

    主要諸元(R26.R 2008 欧州仕様)

    全長/幅/高 4228×1777×1437 mm

    ホイールベース 2625 mm

    車重 1230 kg(DIN)

    エンジン F4RT型 1998 cc 直4ターボ

    最高出力 230 PS/5500 rpm

    最大トルク 310 Nm/3000 rpm

    変速機 6速MT

    タイヤ 235/40R18(標準)または225/40R18 TOYO R888

    0-100 km/h 5.9 s

    メガーヌ 2RSの小ネタ

    • 英国Evo誌では「スーパーカー以外部門で最高位」獲得。 
    • フランス憲兵隊の追跡用高速隊にも採用(Cup仕様)。
    • 生産はスペイン・パレンシア→フランス・ディエップ(アルピーヌ工場)へ輸送してR.S.化。 

    FFの新時代を作り上げたメガーヌ 2RS

    メガーヌII R.S.は「FF=妥協」だった時代を終わらせ、ホットハッチに“走りの純度”を求める流れを決定づけた張本人。

    軽さと足と賢さで勝ち取った8分17秒は、ルノー・スポールの意地とユーモアの結晶です。次世代へバトンを託した今も、この伝説は語り継がれることでしょう。