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  • メガーヌRS – DZF4R【最高のメガーヌ】

    メガーヌRS – DZF4R【最高のメガーヌ】

    Mégane III R.S. -since 2010-

    ――「#UNDER8」宣言で“FF最速戦争”を加速させた三代目ホットハッチ

    「8分切るまで帰ってくるな」

    ──開発陣が掲げた合言葉が 「#UNDER8」 プロジェクトの始まりとなります。 

    開発の背景

    「8分切るまで帰ってくるな」──開発棟の壁に書かれた合言葉が、ルノー・スポールの社内プロジェクト #UNDER8 の始まりでした。

    メガーヌ3RSの「先代」という絶対強者

    2008年、先代メガーヌ R26.R がニュル北コース 8分17秒 を刻んで以来、FF勢はこの“壁”を破れずにいました。

    • Opel アストラ OPC : 8分35秒
    • VW シロッコ R : 8分30秒

    いずれも届かず、「最速FF=メガーヌ」の図式は盤石。ルノー側にはわざわざ新型メガーヌ3RS(250 PS)の公式タイムを出す必然性がなかったのです。

    迫るライバルと「8分切り」宣言

    ところが 2013 年頃、VW ゴルフ GTI 系や Seat León Cupra が高出力化で急速に接近。
    翌 2014 年 3 月、León Cupra 280 が 7分58秒4 を叩き出し、ついに“8分の壁”を突破。ルノー・スポール本部に緊急ミーティングが招集され、プロジェクト #UNDER8 が正式に発動されました。

    275 Trophy-R 誕生

    ストレートな解決策は「軽く、強く、速く」。

    パワートレインはECU最適化と吸排気の見直しにより、273 PS / 360 Nmまで高められた最終形態の名機F4Rt。

    続いてアクラポヴィッチ製チタンマフラー、Öhlinsサスペンション、Speedline Turini 鍛造 19inchホイールなど、バイク勢も飛びつく豪華装備…

    極めつけはリチウムイオンバッテリー&後席撤去で 130 kgの大幅ダイエット。結果、2014 年 6 月、7分54秒36 を記録し王座奪回。#UNDER8 の名は達成とともに世界へ拡散しました。

    ホンダ FK2 シビック Type Rの到来

    2015 年夏、ホンダが 2.0L VTECターボを積む FK2 Civic Type-R を投入し、7分50秒63で最速を更新。

    国内外メディアは「日本車がフレンチと独車の牙城を崩した!」と大々的に報道し、日本でも抽選 10 倍超の争奪戦が起こりました。

    そして、ルノー・スポールはプライドを懸けた最速の名を再び奪い返すべく、メガーヌ4RSの開発が始めます…

    が、これは別の機会にお話しします。

    メガーヌ3RSのモデル

    2010年、メガーヌIIIクーペをベースに250 PS/340 Nmの2.0 L直4ターボを搭載し誕生したのがRS 250。最もノーマルなタイプとなります。

    先代から受け継いだPerfoHub(独立ステア軸)に加え、より高剛性なCupシャシー+機械式LSDで“曲がるFF”をさらに深化させました。

    2011年には過給圧アップで265 PSへ強化した「265 Trophy」が登場し、ニュル北コースで8分07秒97を記録して再びFF最速へ返り咲く。 

    そして2014年、Akrapovičチタンマフラー、Öhlins車高調、Michelin Cup 2で武装した275 Trophyと、後席や4WSを削ぎ落し−約130 kgを実現した究極の275 Trophy-Rがデビュー。

    Trophy-Rはニュルを7分54秒36で駆け抜け、「#UNDER8」の公約を果たしたのでした。 

    なぜそんなに速かったのか

    PerfoHubドライブシャフトの影響を遮断し、ブレーキ&ターンイン同時操作でも舵が乱れない。 

    Cupシャシー強化スプリング+機械式LSD+バイマテリアルローターで、吊るしでもサーキット見劣りしません。 

    超軽量化メニュー(Trophy-R)リアシート撤去、リチウムバッテリー、カーボンRrシートで1 280 kg台へ。パワーよりもパワーウエイトで勝負。 

    シャシー責任者フィリップ・メリメ

    R.S.の開発はサーキット3割、公道7割。 可変ダンパーに頼らず「理想の一点」を突き詰めるからこそ、日常でもサーキットでも矛盾しない。」 

    この哲学はIII型で完成形となり、後に4輪操舵や4HCCを備えたIV型へ継承されます。

    主要諸元(275 Trophy-R 2014 EU仕様)

    全長/幅/高 4299×1848×1435 mm

    ホイールベース 2639 mm

    車重 1297 kg

    エンジン F4Rt型 1998 cc 直4ターボ

    最高出力 275 PS/5500 rpm

    最大トルク 360 Nm/3000 rpm

    変速機 6速MT

    タイヤ Michelin Pilot Sport Cup 2 235/35ZR19

    0-100 km/h 5.8 s

    メガーヌ3RSの小話

    • What Car?「Best Hot Hatch」 を2010-2014連続受賞。 
    • 日本では**「273 パックスポール」**(鍛造ホイール&チタンマフラー装着・20台限定)が発売、即日抽選倍率10倍超え。 
    • 公式ハッシュタグ #UNDER8 はTrophy-R発売後もR.S.ファンの合言葉に。 
  • メガーヌRS – MF4R2【メガーヌ初のRS】

    メガーヌRS – MF4R2【メガーヌ初のRS】

    ――ホットハッチに“トルクステア殺し”を持ち込んだ張本人

    Mégane II R.S. -since 2004-

    2004年、ルノー・スポールが2代目メガーヌをベースに225 PS/300 Nmの2.0 L直4ターボをねじ込み誕生したのがRS 225。

    当時のFFは強烈なトルクステアが抱えモノでしたが、RSは新開発のダブルアクシスストラット(PerfoHub)で“ハンドルが暴れない”という革命を起こします。

    翌05年に更なる足回り硬化、タイヤ空気圧モニタ廃止などを施した「Cup」パッケージが追加され、06年にはF1二連覇記念で作られた“R26”(230 PS+機械式LSD)が発売されました。

    そして、極めつけは08年のR26.R。

    助手席エアバッグもリアシートも撤去、カーボンボンネット&ポリカ窓で-123 kgのダイエットを敢行し、ニュル北で8分17秒を叩き出してFF最速を名乗り上げました。 

    開発の背景

    2000年代前半、ルノーのラインアップはBセグメントにはクリオRS(それこそクリオV6もこの時期)など刺激的なフレンチホットが揃っていましたが、CセグメントはVWゴルフGTI一強となっていました。

    そこでルノー・スポールの開発陣は「ハンドリング命」を掲げ、ステア軸を分離したダブルアクシス・ストラットを新設計。

    パワートレーンには、後にメガーヌ3RSにて魔改造を施されるF4Rtを225馬力仕様で載せ、ゴルフGTIと差別化する戦略を採りました。

    なぜメガーヌ2RSはここまで速かったのか

    まずは新開発のサスペンション「PerfoHub」。

    ステア軸をハブと分離し、ドライブシャフトのキックバックをシャットアウト。

    結果として大トルクでも舵が乱れず、ブレーキングしながらでも安定して曲がれるようになりました。

    …とは書いたものの、やはり一番は限定モデルに施された魔改造でしょう。

    Cup/R26.Rの足スプリング・スタビ径アップに加え、Brembo4ポット&バイマテリアルRotorを奢り、サーキット熱ダレを防止。

    量より質の軽量化樹脂リアウインドウやカーボンボンネットなど高い位置にある重量物を削ぎ落とすことで、低重心化を達成しながら前後重量配分まで最適化。

    その結果、R26.Rは0-100 km/hを5.9 sで駆け抜け、同世代のシビックType R(FD2)をニュルで約13秒置き去りに。RSというバッジに絶対的速さのイメージを刻みました。 

    次世代メガーヌRSに継承されるハイテク<メカ思想

    「快適性とサーキット性能はトレードオフじゃない。理想的な減衰力ポイントは一本しかないから、可変ダンパーなんか要らないんだ」 

    開発責任者フィリップ・メレメ

    この思想は後のIII・IV型にも受け継がれ、一貫して“固定ダンパー主義”を貫くRSの流儀となります。

    主要諸元(R26.R 2008 欧州仕様)

    全長/幅/高 4228×1777×1437 mm

    ホイールベース 2625 mm

    車重 1230 kg(DIN)

    エンジン F4RT型 1998 cc 直4ターボ

    最高出力 230 PS/5500 rpm

    最大トルク 310 Nm/3000 rpm

    変速機 6速MT

    タイヤ 235/40R18(標準)または225/40R18 TOYO R888

    0-100 km/h 5.9 s

    メガーヌ 2RSの小ネタ

    • 英国Evo誌では「スーパーカー以外部門で最高位」獲得。 
    • フランス憲兵隊の追跡用高速隊にも採用(Cup仕様)。
    • 生産はスペイン・パレンシア→フランス・ディエップ(アルピーヌ工場)へ輸送してR.S.化。 

    FFの新時代を作り上げたメガーヌ 2RS

    メガーヌII R.S.は「FF=妥協」だった時代を終わらせ、ホットハッチに“走りの純度”を求める流れを決定づけた張本人。

    軽さと足と賢さで勝ち取った8分17秒は、ルノー・スポールの意地とユーモアの結晶です。次世代へバトンを託した今も、この伝説は語り継がれることでしょう。