カテゴリー: Toyota

  • クルマを知るだけじゃ、わからないもの

    クルマを知るだけじゃ、わからないもの

    このサイトでは、クルマの型式や世代ごとの違いを追っています。エンジン、車重、駆動方式を調べれば、作り手の選択も見えてくる。

    でも、走らせたときの感覚だけは記事に収まりません。ハンドルを切った瞬間の反応や、コーナーの出口でアクセルを踏んだときの落ち着き方。そこは実際に乗って初めてわかる部分です。

    実はなんですが、このサイトとは別に「Sutututu」も運営しています。サーキットの一周を記録し、過去の自分やほかの人とリアルタイムゴーストで走れるiPhoneアプリです。

    クルマ好きのみなさまには、是非ともそっちも使ってもらいたい。そこで今回は、みなさまがサーキットに行きたくなる話をしたいと思います。

    https://apps.apple.com/jp/app/6743934576

    ロードスターは走らせてこそ分かる

    https://kuruma-dna.com/nd5rc

    たとえばNDロードスター。フロントはダブルウィッシュボーン、初期型のSは990kg。文字だけでテンションが上がりますね。

    でも、マツダがロードスターで本当に見せたいのは数字だけではなく、運転したときの感覚だと思うのです。コーナーで限界に近づいても、いきなり破綻せず最後まで緩やかに粘る。この動きは「軽いFR」の一言では伝わりません。自分で走らせて初めてわかる部分です。

    サーキットで剥がれる、クルマの本性

    富士スピードウェイを走るメガーヌ R.S.の車内
    富士スピードウェイでの走行。画像:筆者撮影

    公道でもクルマの挙動はある程度わかります。ただ、サーキットのブレーキングとコーナリングで受けるGは段違いです。タイヤがどこまで踏ん張るのか。限界に達したとき、クルマはどう動くのか。ロードスターの「最後まで粘る」という話も、そこで初めて実感できる。

    しかもサーキットなら、同じコーナーを何度でも走れます。一周目に感じた動きを、次の一周で確かめ直せる。だから一度は走りに行ってほしい。

    ロードスター以外でも走れる

    https://kuruma-dna.com/zc33s

    ロードスターNR-Aのパーティレース、GR86/BRZ Cup、そしてN-ONE OWNER’S CUP。スイフトスポーツZC33Sも筑波サーキットのタイムアタックイベントで対象車両に挙がっています。

    自分のクルマで走るなら、走行会があります。参加できる走行会を一つ見つけて、実際にコースへ出てみてください。

    最初の走行で見えるもの

    コースへ入った途端、普段乗っているクルマでも反応の大きさが違います。ブレーキで前へ荷重が移り、コーナーでは体が投げ出される。アクセルを踏めば、また違う姿勢になる。知っているつもりだったクルマに、まだ知らない動きがあったわけです。

    何周か走るうちにコースの形が頭に入り、自分の操作とクルマの動きがつながってきます。ブレーキの踏み方を変えたらどうなるか。その答えを、次の一周で試せる。

    同じコーナーをもう一度走る

    うまく曲がれなかったコーナーにも、次の周回で戻ってこられます。さっきより落ち着いて曲がれた。少し急いだら、クルマの動きが乱れた。

    その違いを考えながら、また同じコーナーへ向かう。同じコースを繰り返すうちに、自分の運転の癖まで見えてきます。その日の一周を記録しておけば、次に来たときの相手になる。

    ゲームのゴーストを現実のサーキットで

    サーキットの路面を背景にしたSutututuのリアルタイムゴースト画面
    Sutututuのリアルタイムゴースト画面。画像:Sutututu

    そこでSutututuのリアルタイムゴーストです。GPSで記録した過去の一周が、次の走行ではコースに現れます。前の自分との位置関係や秒差は、走行中にも変わっていく。

    レースゲームで自分のベストラップのゴーストと走ったことがある人なら、この面白さはわかるはず。あれを実際のクルマとサーキットでやる。前の自分が速かった場所では離される。今回はうまく走れた場所で近づく。我ながら素晴らしいものを実装したと思います。

    今日の一周が次回のゴーストに。同じ走行中に自己ベストを更新したら、次の周回から新しい記録と走れます。走るたびに相手が変わるわけですね。

    同じコースを走った誰かとも

    フォローした人が共有した走行記録も、条件が合えばゴーストに選べます。本人がいなくても、過去の一周がコース図上の相手です。公開タイムはSutututuのWebでサーキットや車種から探せます。

    自分が走るコースの記録を見つけたら、次はその一周を追いかけたくなる。速い人のゴーストを追う。前の自分の一周を抜きにいく。走りに行くたび、比較する相手が増えていく。

    クルマを知ったら走ってみる

    系譜記事には、作り手が何を選んだかを書いてきました。サーキットでは、メーカーが残したかったものが自分の手にどう伝わるのかまでわかる。

    はじめてで手が出ない人も、自分のクルマで参加できる走行会を一つ見つけてコースを走ってみてください。帰ってから同じ系譜記事を読むと、車重や足回りの数字も違って見えるはずです。

    そして、もし走りに行くなら、是非ともSutututuのiPhoneアプリも使っていただきたい…!

    https://apps.apple.com/jp/app/6743934576

  • GRヤリス(GXPA16)の中古車ガイド【サーキット歴を、どう見抜くか】

    GRヤリス(GXPA16)の中古車ガイド【サーキット歴を、どう見抜くか】

    GRヤリスは、WRCに出るために作られ、そのために市販された車です。3ドア専用ボディ、1.6Lの3気筒ターボ、GR-FOURと名付けられた四輪駆動。普通の量産車とは成り立ちが違います。

    そして中古で買うときの論点も、そこから素直に導かれます。この車は、走らせるために買われた車だからです。

    構成を確認しておきます。1.6Lの直列3気筒ターボ、G16E-GTS型。日本仕様のRZ系で272PS/370N・m(後期はさらに上)。変速機は6速MT(後期には8速ATも追加)、駆動はGR-FOURと呼ばれる四輪駆動。3ドア専用ボディで、ベースのヤリスと共有する部分はごくわずかです。

    前オーナーの使い方が、状態のほぼすべて

    https://kuruma-dna.com/gxpa16

    GRヤリスは、サーキットやジムカーナ、ラリーに持ち込まれる個体が多い車です。それ自体は本来の使い方であって悪いことではありません。問題は、その後どう整備されているかです。

    そして、この車で特に警戒すべきなのがECUチューンと社外パーツの組み合わせです。不適切な社外パーツの装着や、正規でないECUの書き換えによって、隠れた不具合が出やすくなるという指摘があります。

    見るべき痕跡は、追加メーターの取り付け跡と配線、ロールバーやシートレールのボルト穴、ブレーキローターの状態、タイヤの偏摩耗、そして下回りの飛び石やスキッドプレートの傷です。

    「ノーマルです」と言われても、ECUは外観で判断できません。 書き換えの履歴を口頭で確認し、答えられない店では買わないでください。

    加えて、書き換えの有無は診断機で痕跡が残る場合があります。購入前にトヨタのディーラーで点検を受けられるなら、それがいちばん確実です。保証を継承したい場合も、この確認は避けて通れません。

    報告されている不具合

    https://kuruma-dna.com/ncp131

    整備の現場からは、GXPA16について具体的な症例が挙がっています。

    高速走行後のアイドリング不調とエンジンストール。 走ったあとにアイドリングが不安定になり、止まってしまう事例が報告されています。試乗では、ある程度走らせたあとにアイドリングを確認してください。

    低回転域のブースト不足。 4000rpmを超えると正常に過給がかかるのに、それ以下では立ち上がりが鈍いという症例が多いという指摘があります。加速の途中に「谷」があるように感じたら、この可能性を疑ってください。

    ラジエターキャップの根元からの冷却水漏れ。 夏の渋滞やサーキット走行で熱が入ったときに出やすいとされます。リザーバータンクの液量、キャップ周辺の結晶化した跡を見てください。

    これらは公式のリコール内容ではなく、整備現場からの報告です。ただし中古選びの観察点としては有効です。

    試乗のときは、できれば30分以上走らせてもらってください。上に挙げた症例は、いずれも熱が入ってから出るものです。5分の試乗では、この車の状態は分かりません。

    リコールの実施記録

    GRヤリス(GXPA16)
    画像:オーバードライブ83/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    GRヤリスを含む複数車種で、コンビネーションメーターに関するリコールが届け出されています。中古で買うなら、車台番号で対象かどうかと実施済みかを確認してください。

    新しい車ほど、対策の消化状況が中古選びの中心になります。販売店に聞けば記録で分かります。

    前期と後期

    GRヤリス(GXPA16)
    画像:Calreyn88/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    GRヤリスは2024年に大きな改良を受けています。前期と後期では、エンジン出力、内装、変速機の設定(8速ATの追加)などが変わります。

    中古市場では両方が流通しており、価格差もあります。RZ系のグレード名だけで判断せず、年式と装備を確認してください。 社外パーツの適合も前期と後期で分かれることがあります。

    保証の残りを確認する

    https://kuruma-dna.com/xp210

    まだ新しい車なので、メーカー保証が残っている個体があります。400馬力に迫る出力ではないとはいえ、高過給の3気筒ターボと四輪駆動という構成では、保証の有無は大きな安心材料です。

    初度登録日と走行距離を確認し、保証継承の手続きが可能かを販売店に聞いてください。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/grj300

    • ECUチューンと社外パーツの履歴:口頭でも必ず確認。答えられない店は避ける
    • サーキット走行の痕跡:追加メーター跡、ボルト穴、ブレーキ、タイヤ、下回りの傷
    • 走行後のアイドリング:試乗の最後にもう一度確認する
    • 加速時のブースト:低回転域での立ち上がり、途中の谷
    • 冷却系:ラジエターキャップ周辺、リザーバーの液量と色
    • リコールの実施記録:コンビネーションメーターの件
    • 保証の残存:初度登録日、走行距離、継承の可否
    • 前期か後期か:年式と装備で確認

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/zn8

    向いている人は、この車の成り立ちを理解している人です。GRヤリスは競技のために作られ、その過剰さがそのまま商品になりました。同じ思想の車は、いまの市場にほとんどありません。

    そして、整備を惜しまない人。高過給・四輪駆動・軽量というのは、消耗が速い組み合わせです。タイヤもブレーキもオイルも、普通の車より早く減ります。

    やめた方がよい人は、安く速い車を探している人です。GRヤリスの中古は安くありませんし、維持費も相応です。そして、酷使された個体を掴んだときの修理費は読めません。

    維持費についても現実的に見ておきましょう。1.6Lで自動車税は3万4500円の区分ですが、ハイオク指定で実燃費は街乗り9km/L前後。タイヤは18インチで、GR用の銘柄を選べば1セットでまとまった額になります。四輪駆動なので、4本同時交換が基本です。

    結局、GRヤリスの中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/a90

    ECUに手が入っておらず、サーキットの痕跡が薄く、保証が残っている個体なら買いです。 逆に、この3つのどれかが怪しい個体は、価格が安くても見送るべきです。

    GRヤリスは、大手メーカーが「勝つため」という理由を手にしたときに何が起きるかの実例でした。その過剰さを楽しめるかどうかが、この車を選ぶ基準です。

  • プリウス30系(ZVW30)の中古車ガイド【バッテリーは予兆なく来る】

    プリウス30系(ZVW30)の中古車ガイド【バッテリーは予兆なく来る】

    2009年に登場した3代目プリウス、ZVW30。街のどこを見てもプリウスがいる、という光景を作った世代です。中古市場の流通量も国内最大級で、価格も手頃。

    だからこそ、選び方を知っているかどうかで差が出ます。 この車の論点は、はっきりしています。

    構成を確認しておきます。1.8Lの2ZR-FXE型にモーターを組み合わせたTHS II、システム出力は136PS。変速機は電気式無段変速機、駆動は前輪(後にE-Fourも)。車重は1.3トン前後で、JC08モードで30km/L超という数字を掲げた世代です。

    駆動用バッテリーは、予兆なく来る

    https://kuruma-dna.com/zvw30

    30系のハイブリッドバッテリーは耐久性が高いことで知られています。それでも寿命はあり、14万〜17万kmあたりで交換時期を迎えるという見方が一般的です。

    厄介なのは、予兆がほとんどないことです。前触れなく警告灯が点き、最悪の場合ハイブリッドシステムが止まって走行不能になります。「調子が悪くなってきたから準備する」という時間がありません。

    つまり中古で選ぶときは、走行距離と、バッテリー交換の履歴を最重要の判断材料にしてください。10万kmを超えた個体を買うなら、交換費用を予算に組み込むのが現実的です。

    交換の選択肢としてリビルト品もありますが、新品より耐久性で劣るという指摘があります。安く直すか、長く乗るか。ここは購入時に決めておいたほうがいい判断です。

    昇圧回路のリコール

    https://kuruma-dna.com/nhw20

    30系プリウスには、大規模なリコールが出ています。内容は、加速時などの高負荷走行でハイブリッドの昇圧回路の素子に想定外の熱応力がかかり、損傷すると警告灯が点いてハイブリッドシステムが停止し、走行不能になるおそれがあるというものです。対象は40万台を超える規模でした。

    中古で買うなら、車台番号で対象かどうかと実施済みかを必ず確認してください。走行不能につながる内容なので、ここは妥協できません。

    この件は台数が非常に多いため、大半の個体は実施済みのはずです。確認していないことがリスクであって、リコールが出ていること自体を過度に恐れる必要はありません。

    EGRバルブの煤

    プリウス 30系(ZVW30)
    画像:Ethan Llamas/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    ハイブリッド車はエンジンの始動と停止を頻繁に繰り返します。その結果、EGR(排気再循環)バルブの内部に煤が溜まり、正常に開閉できなくなることがあります。

    症状としては異音や、エンジンの不調として出ます。清掃で改善することが多く、致命的ではありません。ただし放置すると別の不調につながるので、距離を重ねた個体では清掃歴があるかを確認しておきたい部分です。

    EGR関連の清掃は、専門的な作業ではありません。整備工場で対応できる範囲なので、購入後に一度やっておくと安心です。中古で買ったらまずやること、のリストに入れておいてください。

    ブレーキアクチュエーターと延長保証

    プリウス 30系(ZVW30)
    画像:Ethan Llamas/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    30系プリウスでは、ブレーキアクチュエーターが延長保証の対象になっています。制動力の低下に関わる部分で、リコールの届け出もありました。

    該当する場合、条件を満たせば無償で対応してもらえる可能性があります。購入前に、対応済みかどうかと保証の残りを販売店に確認してください。

    玉数が多いことの意味

    https://kuruma-dna.com/zvw50

    30系は流通量が非常に多く、価格帯も広い。同じ年式・同じ距離でも、状態と価格の組み合わせが幅広いということです。

    つまり、妥協する必要がありません。バッテリー交換済み、リコール実施済み、記録簿あり。この3条件を満たす個体を探しても、選択肢は残ります。

    タクシーや営業用途で使われた個体も混ざります。走行距離は伸びますが、定期的に整備されてきた車でもあります。距離だけで切り捨てず、整備の中身を見てください。

    営業用途の個体は、法定点検の記録が残っていることがあります。誰がいつ何をしたかが追える車は、それだけで有利です。内装の傷みと引き換えに、機関の履歴が手に入ると考えることもできます。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/nhw10

    • 駆動用バッテリー:走行距離、交換履歴、交換したなら新品かリビルト品か
    • リコールの実施記録:昇圧回路の件。車台番号で確認
    • ブレーキアクチュエーター:延長保証の対応履歴
    • EGRバルブ:異音、エンジンの不調、清掃歴
    • エンジン内部:オイルフィラーキャップ裏の汚れ、記録簿の交換頻度
    • 足まわり:距離の伸びた個体はブッシュとダンパーがへたっている
    • 修復歴と水没歴:安すぎる個体は理由を聞く

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/mxwh60

    向いている人は、燃費と維持費を最優先する人です。30系は実燃費でいまも十分に戦えますし、部品も整備先も豊富。「安く、長く、壊れにくく」を求めるなら、選択肢として非常に強い。

    やめた方がよい人は、購入予算を使い切ってしまう人です。バッテリー交換が来たときに動けなくなります。車両価格を抑えて、その分を将来の交換費用として残しておく買い方が正解です。

    維持費そのものは軽い部類です。1.8Lで自動車税は3万9500円の区分、実燃費は20km/L台に届きます。燃料代で浮いた分を、バッテリーの備えに回すという考え方が、この車には合っています。

    走りを求める人にも向きません。この車の価値は、そこにはありません。

    結局、30系プリウスの中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/grx130

    リコールが実施済みで、バッテリーの残り寿命が読めて、記録簿がある個体なら買いです。 玉数が多いので、条件を落とす理由がありません。

    30系は、ハイブリッドが「特別な技術」から「当たり前の選択肢」になった世代でした。その台数の多さが、いま中古車としての選びやすさになっています。

  • アルファード30系の中古車ガイド【台数が多いからこそ、個体差で決まる】

    アルファード30系の中古車ガイド【台数が多いからこそ、個体差で決まる】

    2015年に登場した30系アルファードは、高級ミニバンという商品が完成した世代です。エグゼクティブラウンジのような上級グレードは、後席の設えだけで高級セダンと張り合いました。

    そして中古市場では、流通量が非常に多い。だから選び方の問題は「探せるか」ではなく、「どの個体を選ぶか」になります。

    構成を確認しておきます。ガソリンは2.5Lの2AR-FE(AGH30W/35W)と3.5LのV6(GGH30W/35W)、ハイブリッドは2.5Lに前後モーターを組み合わせたE-Four(AYH30W)。駆動は前輪駆動と四輪駆動、変速機はCVTまたは6速AT(V6)です。

    安すぎる個体には、必ず理由がある

    https://kuruma-dna.com/alphard-30

    台数が多い車ほど、相場から外れた個体が目につきます。そして30系アルファードでは、安い個体に修復歴や水没歴が含まれている可能性が指摘されます。

    修復歴は表示義務がありますが、判定基準の外にある修理は表示されません。水没歴はさらに分かりにくい。シートレールの錆、内装の金具の腐食、カーペットの下の泥や異臭が手がかりになります。

    もうひとつ、この車は法人利用や送迎用途で使われた個体も多く流通します。走行距離が伸びていても整備が行き届いているならむしろ有利ですが、距離のわりに内装が傷んでいる個体は、使われ方が荒かったと考えるべきです。

    相場より2割以上安い個体は、まず理由を聞いてください。

    加えて、この車は輸出需要が強く、程度の良い個体ほど海外へ流れる傾向があります。国内に残る個体の相場が下がりにくいのはそのためです。「相場が高い」のではなく「安い個体には理由がある」と考えたほうが正確です。

    ハイブリッドは駆動用バッテリーの残り寿命を見る

    https://kuruma-dna.com/alphard-40

    ハイブリッド車(AYH30W)を検討するなら、駆動用バッテリーの状態が最大の論点です。

    寿命は15万〜20万km付近とされることが多い一方、使用状況による差が大きく、10万km前後で不調が出る例も報告されています。交換となれば大きな出費です。

    確認方法としては、走行距離と年式に加えて、ディーラーでバッテリーの状態を診断してもらうのが確実です。保証が残っているかも合わせて確認してください。トヨタのハイブリッド機構には長期保証の枠組みがあり、条件を満たせば無償修理の対象になります。

    ガソリン車(AGH30W/35W)ならこの心配はありません。燃費と静粛性を取るか、リスクの少なさを取るかという判断になります。

    V6(GGH30W/35W)という選択肢もあります。動力性能に余裕があり、ハイブリッドのバッテリー寿命という心配もない。燃費は落ちますが、大人数を乗せて長距離を走る使い方なら、むしろ合理的です。

    経年で来るもの

    https://kuruma-dna.com/vellfire-30

    エアコンのコンプレッサー。 焼き付きや異音が定番として挙がります。ミニバンは車内容積が大きく、エアコンへの負荷も大きい。試乗では必ず最大冷房で作動音と冷えを確認してください。

    オルタネーター。 電装品が多い車ほど負荷がかかります。アイドリング時の電圧、警告灯の履歴を見てください。

    冷却系。 ウォーターポンプとラジエターの状態は要確認です。水温の上がり方、リザーバータンクの液量と色、漏れの跡。

    エンジン内部のスラッジ。 オイル交換を怠った個体では内部が汚れます。フィラーキャップの裏を覗いてください。2AR-FEは、先代20系で指摘されたピストンリングの問題が改善されたエンジンですが、管理の悪さは別の形で出ます。

    スライドドアと電装は全部動かす

    アルファード 30系
    画像:Bahnfrend/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    高級ミニバンは装備が多く、そのぶん壊れる箇所も多い車です。

    両側の電動スライドドア、パワーバックドア、電動シート、後席モニター、エアコンの前後独立制御。現車確認では、装備を一つ残らず動かしてください。 動かないものがあれば、その修理費を見積もる必要があります。

    特にスライドドアは開閉頻度が高く、モーターとレール、そしてワイヤーが消耗します。開閉時の異音と、途中で止まらないかを何度も確かめてください。

    前期と後期

    https://kuruma-dna.com/alphard-20

    30系は2017年末に大きなマイナーチェンジを受け、外観と装備が更新されました。中古では後期型が人気で、価格も上です。

    リセールを重視するなら後期、価格を抑えるなら前期という整理になります。機械的な信頼性で大きな差があるわけではないので、予算と好みで決めて構いません。

    リセールの話をもう少し具体的にすると、この車は数年乗っても価格が落ちにくい部類です。購入価格の高さは、売却時にある程度戻ってくると考えれば、実質的な負担は数字ほど大きくありません。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/alphard-10

    • 相場との乖離:安すぎる個体は理由を聞く。修復歴・水没歴
    • 水没の痕跡:シートレールの錆、金具の腐食、カーペット下の泥と異臭
    • ハイブリッドなら駆動用バッテリー:診断結果と保証の残り
    • エアコン:最大冷房での作動音と冷え
    • 冷却系:水温、リザーバーの液量と色、漏れ跡
    • 電装の全機能:両側スライドドア、パワーバックドア、電動シート、モニター
    • 内装の傷み具合:走行距離とのバランス。距離のわりに荒れていれば使われ方が荒い
    • 記録簿:オイル交換の頻度

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/zvw50

    向いている人は、後席に価値を置く人です。30系は「運転する人」ではなく「乗せる人」のための車として完成しています。家族、送迎、長距離移動。この用途なら、同価格帯で代わりになる車はほとんどありません。

    やめた方がよい人は、維持費を抑えたい人です。車体が大きく重く、タイヤも大径。燃費もそれなりです。加えて装備が多いぶん、故障したときの修理費もかさみます。

    駐車場の制限も確認してください。全長4,900mm超・全高1,900mm前後は、機械式駐車場に入りません。

    維持費についても現実的に見ておきましょう。2.5Lで自動車税は4万5000円の区分、車重2トン超で重量税も相応。タイヤは大径で、4本交換すればまとまった額です。車両価格より、ランニングコストで判断してください。

    結局、30系アルファードの中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/s210-crown

    相場から外れていない個体で、装備が全部動き、記録簿があるなら買いです。 台数が多いので、妥協する必要はまったくありません。

    30系は、日本の「いい車」の基準が運転席から後席へ移ったことを示す世代でした。その完成度を、いまの中古価格で味わえます。

  • 86(ZN6)の中古車ガイド【バルブスプリングと、直噴の宿題】

    86(ZN6)の中古車ガイド【バルブスプリングと、直噴の宿題】

    2012年に登場したZN6型86は、トヨタとスバルが組んで作った後輪駆動のスポーツカーです。水平対向4気筒の2.0L、FA20型。200PS、車重1.2トン台、そして細いタイヤ。限界の高さではなく、限界の手前を楽しませる設計でした。

    数字を確認しておきます。FA20型は2.0Lの水平対向4気筒で、直噴とポート噴射を併用するD-4Sを備えて200PS/7,000rpm、205N・m/6,400〜6,600rpm。変速機は6速MTと6速AT、駆動は後輪です。車重は1.2トン前後で、タイヤは215/45R17(グレードによる)。

    中古市場では玉数が豊富で、価格帯も広い。だからこそ、見るべき点を知っているかどうかで結果が変わります。

    まずバルブスプリングのリコール

    https://kuruma-dna.com/zn6

    86/BRZには、エンジンの動弁機構の設計が不適切で、バルブスプリングに設計条件を超える荷重がかかるという内容のリコールが出ています。破損するとエンジンから異音が出て不調になり、走行中であればエンジンが停止するおそれがある、という深刻な内容です。

    中古で買うなら、この対策が済んでいるかを車台番号で必ず確認してください。 対象であれば、ディーラーで実施記録が確認できます。

    対策が済んでいれば問題ありません。逆に、未実施のまま流通している個体があれば、購入前に対応してもらうよう交渉してください。費用はメーカー負担です。

    確認の手順としては、車検証の車台番号を控えてトヨタのリコール検索にかけるか、販売店に問い合わせるのが早い。実施済みなら整備記録に残ります。「対象外」なのか「未実施」なのかは、はっきり区別して確認してください。

    直噴エンジン固有の宿題

    https://kuruma-dna.com/zc6

    FA20は直噴とポート噴射を併用するエンジンで、直噴側には高圧のインジェクターが使われています。ここに、この車固有の注意点があります。

    インジェクターのシール。 新品では白いシール材が、距離を重ねると炭化してボロボロになります。放置すると燃焼室側からの吹き返しや、始動性の悪化につながります。

    VVTソレノイドからのオイル漏れ。 可変バルブタイミングを制御する部品からオイルが漏れ、最悪の場合ECUの破損につながるとも言われます。エンジンルームを覗いて、ソレモイド周辺の滲みを確認してください。

    オイルポンプの劣化によるVVTの作動不良。 オイルの圧力が落ちると、可変バルブタイミングが正常に働かなくなります。アイドリングの不安定や、回転の伸びの鈍さとして出ます。

    イグニッションコイル。 初期型では、コイルとインジェクターに起因するエンジン不調の報告があります。

    これらはいずれも、オイル管理と年式に強く関係します。 記録簿でオイル交換の頻度を確認し、フィラーキャップの裏も見てください。

    交換の間隔は、高回転を多用する車ほど短く見るべきです。サーキット走行歴があるなら、その前後で交換されているかを見てください。距離ではなく、どう使ってどう管理したかがすべてです。

    駆動系とクラッチ

    https://kuruma-dna.com/zn8

    ミッションの耐久性は、この車の弱点として挙げられることがあります。シフトタッチが変わってきたら要注意という言い方をされ、シンクロやベアリングの摩耗が疑われます。

    また、ミッション付近からの異音は、クラッチのレリーズベアリングの劣化として語られます。試乗では、クラッチを踏んだ状態と離した状態で音が変わるかを確かめてください。

    86はサーキットや峠で使われる個体が多く、駆動系の消耗は走行距離だけでは測れません。タイヤの摩耗パターン、ブレーキローターの状態、追加メーターの跡などから、使われ方を推測してください。

    ドリフト用途で使われた個体は、リアタイヤの偏摩耗、デフの音、そして車体の歪みに出ることがあります。フロントのタイヤハウス内側や、ドアの建て付けを見て、修復歴として表示されていない修理の跡がないかを確認してください。

    テールランプからの浸水

    トヨタ 86(ZN6)
    画像:先従隗始/CC0(Wikimedia Commons)

    意外と知られていないのが、テールランプ内部のパッキンが劣化して雨水が入り込み、トランク内に水が溜まるというトラブルです。放置すればトランク内が錆びます。

    現車確認では、トランクの内張りをめくって、スペアタイヤスペースやその周辺に水の跡や錆がないかを見てください。車の状態そのものより、前オーナーがこれに気づいていたかどうかが分かります。

    前期と後期

    トヨタ 86(ZN6)
    画像:先従隗始/CC0(Wikimedia Commons)

    ZN6は途中で改良を受けています。後期型ではエンジン制御やサスペンションの設定が見直され、内装や装備も更新されました。

    中古では、後期型のほうが完成度が高いという評価が一般的です。ただし価格も上がります。前期型を選ぶ場合は、上に書いたリコールと直噴まわりの整備がどこまで済んでいるかを、より丁寧に確認してください。

    現車確認で見るべきポイント

    https://kuruma-dna.com/s210-crown

    • バルブスプリングのリコール実施記録:最優先。車台番号で確認
    • エンジンルームのオイル滲み:VVTソレノイド周辺、ヘッドカバー
    • アイドリングと吹け上がり:VVTの作動不良、失火の兆候
    • クラッチとシフト:踏んだときの異音、シフトタッチ、繋がる位置
    • トランク内の水と錆:内張りをめくって確認
    • 使われ方:タイヤの偏摩耗、ブレーキローター、追加メーターや配線の跡
    • 記録簿:オイル交換の頻度。高回転を使う車なので、ここが最重要

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/xp130

    向いている人は、後輪駆動の入口を安く手に入れたい人です。86はいまも中古市場に十分な数があり、部品も社外パーツも豊富。自分で手を入れながら乗るには、これ以上ない教材です。

    やめた方がよい人は、速さそのものを求める人です。200PSという数字は、いまの基準では突出していません。この車の価値は、限界の低さと分かりやすさにあります。

    維持費は国産スポーツとして標準的です。2.0Lで自動車税は3万9500円の区分、ハイオク指定で実燃費は街乗り10km/L前後。タイヤも17インチで、選択肢が多く価格も落ち着いています。

    また、整備を後回しにしたい人にも向きません。直噴エンジンとVVTを持つ以上、オイル管理を怠れば確実に症状が出ます。

    結局、ZN6の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/alphard-30

    リコールが済んでいて、記録簿があり、オイル管理がされてきた個体なら買いです。 玉数が多いので、条件を妥協する必要はありません。

    86は、トヨタが「作らない理由」を捨てて出した後輪駆動でした。その最初の世代を、いまの価格で買えるのは悪い話ではありません。

  • コロナ マークII X30/X40が欲しい? ならこう探す【規制の時代の車を、現車で見る】

    コロナ マークII X30/X40が欲しい? ならこう探す【規制の時代の車を、現車で見る】

    1976年12月に登場した3代目、X30/X40系。セミクラシック調の押し出しを得て、マークIIが「コロナの上級版」から高級パーソナルカーへ踏み出した世代です。この代から姉妹車のチェイサーが加わりました(クレスタの登場は1980年のX60世代からです)。

    そして50年近くが経ったいま、この車を中古で探すというのは、現車を自分の目で見に行けるかどうかの話になります。

    この世代の中身も押さえておきます。1976年12月に登場し、ボディは4ドアセダン、2ドアハードトップ、ワゴン、バンを揃えました。エンジンは4気筒と直列6気筒の両方が用意され、上級グレードには6気筒が積まれます。姉妹車のクレスタが加わったのもこの代からです。

    販売店の但し書きが、すべてを語っている

    https://kuruma-dna.com/x30

    価格帯の話もしておきます。この年代のマークIIは、状態によって価格が極端に分かれます。動くだけの個体と、レストア済みの個体では桁が違う。中間がほとんど無いのが、50年落ちの旧車の相場です。

    この年代のマークIIを扱う店の説明文には、「錆や腐食がありますので、現車確認が可能な方のみ」という趣旨の但し書きが普通に付きます。

    これは不誠実な表示ではなく、むしろ正直な表示です。1970年代の日本車で、錆がまったく無い個体はほぼありません。問題は、どこにどれだけ出ているか。そしてそれは写真では分かりません。

    だからこの車を検討するなら、遠方の個体でも見に行く前提で考えてください。行けないなら、買わないほうがいい。現車確認できない旧車は、賭けになります。

    見に行くときは、できれば雨上がりを避けてください。濡れていると塗装の状態も錆も分かりにくくなります。そして必ず、エンジンが冷えた状態から始動させてもらってください。暖まった状態で見せられると、始動性の問題が隠れます。

    排出ガス規制のただ中に作られた車

    https://kuruma-dna.com/x10

    グレードの選び方としては、直列6気筒を積む上級グレードのほうが、この世代の狙いを味わえます。4気筒は実用寄りで、当時の販売の主力でもありました。どちらが良いかではなく、何を体験したいかで選んでください。

    X30/X40系が売られたのは、昭和50年・51年排出ガス規制への対応が進んでいた時期です。トヨタはTTC(トヨタ・トータル・クリーン・システム)で対応しましたが、その代償として出力は落ちています。

    これを理解しておかないと、試乗で「調子が悪いのでは」と誤解します。この時代の車は、そもそも速くありません。 加速の鈍さは故障ではなく設計です。

    逆に言えば、この車の価値は速さではありません。当時の内装の質感、直列6気筒の滑らかさ、そしていまでは作られない造形。そこに向かう人のための車です。

    逆に、この時代の車ならではの良さもあります。電子制御が最小限なので、不調の原因が追いやすい。キャブレターや点火系の調整で、体感がはっきり変わる。手を入れた結果が分かりやすいという意味では、いまの車よりずっと面白いとも言えます。

    部品供給という、最大の制約

    https://kuruma-dna.com/x60

    逆に、消耗品や機関系は同時代のトヨタ車と共通するものがあり、まだ手に入る場合があります。旧車を扱う店に相談すれば、代替品や流用の情報が出てくることもあります。「純正が無い=直せない」ではありません。

    オーナーの声で必ず挙がるのが、部品供給です。50年前の大衆向け高級車で、しかも当時よく売れたぶん乗り潰された車。内外装の専用部品は、基本的に「出てきたら買う」世界です。

    エンジンや足まわりの消耗品は、同世代のトヨタ車と共通するものがあり、まだ何とかなる場合があります。しかしメッキモール、内装トリム、レンズ類、エンブレムといった部品は、欠品したまま乗ることになる可能性が高い。

    購入前に、部品を探せるルート(旧車専門店、部品取り車の情報、オーナーのつながり)を確保できるかを考えてください。

    部品の探し方としては、同年代のトヨタ車と共通する機関部品から当たるのが基本です。内外装は、オーナーズクラブや旧車イベントでの情報交換が実質的な入手経路になります。買う前にその輪に入っておくと、後が楽になります。

    現車確認で見るべきポイント

    コロナ マークII(X30系)
    画像:先従隗始/CC0(Wikimedia Commons)
    • 錆と腐食:フロア、リアの足まわり取り付け部、フェンダー内側、ドア下端、トランク内。写真では絶対に分からない部分
    • 修復とパテ:磁石が付くか、塗装の厚み、板金の跡
    • エンジンの始動と煙:始動性、白煙・黒煙、アイドリングの安定
    • 冷却系:ホースの硬化、漏れ跡、水温の上がり方
    • 内外装の欠品:モール、トリム、レンズ、エンブレム。欠けていれば補充は困難
    • 書類と来歴:どこで、誰が、どう維持してきたか

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    コロナ マークII(X30系)
    画像:先従隗始/CC0(Wikimedia Commons)

    向いている人は、1970年代の日本車が持っていた空気そのものを求める人です。角ばった造形、厚みのある内装、直6の穏やかな回り方。当時の「上級車」の感覚は、いまの車では再現できません。錆と部品と付き合う覚悟がある人向けです。

    置き場所も重要です。50年落ちの車を青空駐車で維持するのは現実的ではありません。屋根と、できれば壁のある場所を確保してから探し始めてください。

    やめた方がよい人は、走りを求める人と、現車を見に行けない人です。この世代のマークIIに、ハイソカーブームの華やかさや速さを期待すると外します。その価値は、GX71以降の世代にあります。

    結局、X30/X40の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/gx71

    現車を見て、錆が許容範囲で、部品が揃っているなら買いです。 それ以外の条件では、手を出さないほうがいい。

    X30/X40系は、マークIIが「コロナの上」から抜け出す途中の姿でした。規制と不況の時代に作られたからこそ、当時の作り手が何を守ろうとしたかが見える世代です。

  • ヴィッツ GRMN(NCP131)が欲しい? ならこう探す【150台限定を、履歴で選ぶ】

    ヴィッツ GRMN(NCP131)が欲しい? ならこう探す【150台限定を、履歴で選ぶ】

    1.8Lの直列4気筒(2ZR-FE)にスーパーチャージャーを組み合わせて212馬力/250N・m、変速機は6速MTのみ、車重は1,140kg。チューニングを担当したのはロータス。17インチのBBS鍛造ホイールに専用ブレーキ。そして国内150台限定。

    ヴィッツGRMNは、いまのGRブランドが立ち上がる瞬間に生まれた特別な一台です。そして中古で買おうとすると、普通の車とはまったく違う難しさにぶつかります。

    情報が少ないこと自体が、いちばんのリスク

    https://kuruma-dna.com/ncp131

    国内150台。この数字がすべてを決めています。

    中古車を選ぶとき、普通は「この車のこの部分が弱い」という蓄積された知見を頼りにします。オーナーが何千人もいれば、故障の傾向は自然に共有されるからです。ところがGRMNの場合、母数が150台しかありません。故障事例が語られていないのは、丈夫だからではなく、単に台数が少ないからという可能性が高い。

    つまりこの車は、「よくある持病」を避ける買い方ができません。代わりにできるのは、個体そのものの履歴を徹底的に確認することです。整備記録、走行距離、保管状況、前オーナーの使い方。これらが判断材料のほぼすべてになります。

    だから販売店選びが、そのまま個体選びになります。GRMNを扱った経験がある店、あるいは記録を追えるトヨタのディーラー系であれば、聞ける情報の量が違います。「詳しいことは分かりません」という店から買うのは、この車では特に危険です。

    専用部品が出るかどうか

    https://kuruma-dna.com/gxpa16

    GRMNのうち、ベースのヴィッツ(NCP131系)と共通する部分は、消耗品も含めて比較的入手しやすいはずです。問題は専用部品です。

    スーパーチャージャー本体とその周辺、専用のブレーキ、BBSの鍛造ホイール、そして専用内装。これらは150台ぶんしか作られていません。破損や欠品があった場合、代替が見つからない可能性を前提に考える必要があります。

    中古で検討するなら、ホイールのガリ傷、ブレーキの残厚、内装の欠品を細かく見てください。他の車なら「あとで直せばいい」で済む部分が、この車では致命的な減点になり得ます。

    同時に、ベース車のヴィッツ(NCP131系)と共通する部分は、消耗品を含めて比較的手に入ります。ブレーキパッド、ブッシュ、ゴム類といった通常の整備で困ることは少ないでしょう。専用部品と共通部品を切り分けて考えるのが、この車の維持のコツです。

    個体が二極化している

    ヴィッツ GRMN(NCP131)
    画像:Tokumeigakarinoaoshima/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    抽選倍率が10倍以上と報じられた車です。当選した人の目的はさまざまで、その結果、いまの中古市場には性格の違う個体が混ざっています。

    価格の話もしておきます。GRMNは希少性から相場が高止まりしており、同じ予算でGRヤリスの中古が視野に入ることもあります。性能で選ぶならGRヤリス、歴史で選ぶならGRMNという整理が、いちばん正直なところです。

    ほとんど走っていない保存個体。 資産として買われ、屋内保管でごく短距離しか走っていない車。状態は良い一方、長期間動かしていない車特有の問題(ゴム類の劣化、ブレーキの固着、燃料系の劣化)があり得ます。価格も高めです。

    しっかり走らせてきた個体。 サーキットやラリーで使われた車もあります。GRMNはもともとそういう性格の車なので、これ自体は悪いことではありません。ただし過給機付きのエンジンを高負荷で使い続けた履歴は、内部に残ります。

    どちらを選ぶにせよ、距離が少ない=良い個体とは限らないことは押さえておいてください。動かしていない車には、動かしていない車の問題があります。

    長期保管された個体で特に見たいのは、タイヤの製造年週、ブレーキの引きずり、そしてゴムホース類の硬化です。走行距離が1万kmでも、10年動かしていなければゴムは10年ぶん劣化しています。

    逆に、定期的に走らせて整備してきた個体は、距離が伸びていても状態が良いことがあります。この車では、走行距離を状態の代理指標にしないでください。

    過給機付きとして、最低限見ておくこと

    https://kuruma-dna.com/nre210h

    加えて、スーパーチャージャーは吸気側の部品であるぶん、ターボと違って排気熱の影響を受けにくい構造です。過給機まわりの心配は、ターボ車より小さいと考えていいでしょう。心配すべきは、むしろ150台という台数のほうです。

    スーパーチャージャーはターボと違って排気熱の影響は小さいものの、機械式である以上ベルトやクラッチ、ベアリングといった消耗部品を持ちます。異音、加速時の過給感、ベルトの状態は試乗と目視で確認してください。

    オイル管理も重要です。過給機付きで高回転を使う車は、オイルの劣化が走行距離以上に効きます。記録簿でオイル交換の頻度を確認し、フィラーキャップの裏側も覗いておきましょう。

    現車確認で見るべきポイント

    ヴィッツ GRMN(NCP131)
    画像:TTTNIS/CC0(Wikimedia Commons)
    • 整備記録簿:この車ではこれが最重要。記録が無い個体は、どれだけ見た目が良くても判断材料が無い
    • 走行距離の少なさの理由:長期保管か、単に乗っていないか。保管環境も聞く
    • 過給機まわり:加速時の過給感、ベルトの状態、異音
    • 専用部品の欠品と傷:BBSホイールのガリ傷、専用ブレーキの残厚、内装のパーツ
    • 足まわり:サーキット走行歴の有無。タイヤの摩耗パターン、ブレーキローターの状態
    • 修復歴:150台しかない車の修復歴は、その後の部品調達に直結する

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/s220

    維持費としては、1.8Lで自動車税は3万9500円の区分。車重1,140kgで燃費もそれほど悪くありません。普通に乗るぶんには、維持費で困る車ではありません。

    向いている人は、この一台が持つ意味に価値を感じる人です。ヴィッツGRMNは、GAZOO Racingがブランドとして形になる直前に、ロータスの手を借りて作った実験的な小型ホットハッチでした。GRヤリスへ至る流れの、最初の一歩にあたります。歴史の中の位置づけごと欲しいなら、代わりになる車はありません。

    やめた方がよい人は、走りの性能そのものを求める人です。212馬力の小型ハッチという体験は、いまならGRヤリスのほうが確実に速く、部品も情報も揃っています。走りだけを見るなら、GRMNを選ぶ合理性はありません。

    結局、ヴィッツGRMNの中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/a90

    記録簿が揃っていて、専用部品に欠品や大きな傷がない個体なら買いです。 ただし価格は、性能に対してではなく希少性に対して付いています。そこを納得できるかどうかがすべてです。

    150台という数字は、これから増えることはありません。手放す人が現れたときにだけ、買う機会がある車です。

  • クラウン S140系の中古車ガイド【30年落ちのハイソを、いま探す】

    クラウン S140系の中古車ガイド【30年落ちのハイソを、いま探す】

    1991年10月に登場したS140系は、バブルの絶頂で企画され、その崩壊とともに売られた世代です。主力は直列6気筒。2.0Lの1G-FE、2.5Lの1JZ-GE、そしてツインターボの1JZ-GTE。ペリメーター式フレームを採用した最後のクラウンでもあります。

    そして30年以上が過ぎたいま、この車を買うというのは、高級車を買うことではなく旧車を買うということです。

    まず、探せるかどうか

    https://kuruma-dna.com/s140

    S140系はセダンとハードトップで内装も装備も違い、さらにグレードによってエアコンやシートの仕様が変わります。同じ「S140」でも、装備が多い個体ほど壊れる箇所も多いという当たり前の関係が効いてきます。

    S140系は当時よく売れました。しかし、よく売れた車ほど残りません。法人利用が多く、乗り潰され、廃車になり、そして海外へ流れていきました。

    いま中古車サイトで探しても、掲載は多くありません。しかも状態の幅が極端です。大事にされてきた1台と、放置に近い1台が、同じような価格で並ぶことがあります。だから相場だけを見て判断すると失敗します。

    価格帯としては、動けば買える水準から、程度の良い個体まで幅があります。安い個体は「動く」だけで、その先に費用がかかると考えてください。 逆に、相場より高い個体には理由があります。錆の少なさか、記録の充実か、あるいは装備か。理由を聞いて納得できるなら、高いほうが結果的に安く付きます。

    グレードとエンジンで見れば、走りを求めるなら1JZ-GTEを積むモデル、静かに乗るなら1JZ-GEというのが素直な選び方です。ただし選べるほど玉数がないのが実情です。

    30年落ちに来るもの

    https://kuruma-dna.com/s120

    優先順位をつけるなら、錆、冷却系、ブレーキ、エアコンの順です。錆は購入判断そのもの、冷却系はエンジンに波及、ブレーキは安全。エアコンは快適性なので、予算が足りなければ後回しにできます。

    錆。 最優先で確認してください。フレーム、フロア、リアの足まわり取り付け部、そしてマフラーとその吊り。この年代の車は防錆処理が現代の水準ではなく、融雪剤を使う地域で使われた個体は特に厳しい。フレームに錆が出ている個体は、価格に関係なく見送るべきです。

    エアコン。 高級車ゆえに装備は複雑です。オートエアコンのアクチュエーター、コンプレッサー、配管。どれかが来ると、修理費がまとまった額になります。試乗では必ず全モードを動かしてください。

    電装。 パワーシート、パワーウィンドウ、集中ドアロック、デジタルメーター(装着車)。装備が多いぶん、壊れる箇所も多い。動かない機能がひとつでもあれば、その先に何が控えているか分かりません。

    冷却系とゴム類。 ホース、シール、ブッシュ。走行距離が少なくても年数で硬化します。買った直後に一式リフレッシュする前提で予算を組んでください。

    優先順位としては、冷却系、ブレーキ、足まわりのブッシュ、そしてエアコンの順です。冷却系はエンジンに波及し、ブレーキは安全に直結します。エアコンは快適性の問題なので、予算が足りなければ後回しにできます。

    逆に、ここは安心していい

    https://kuruma-dna.com/s180

    1JZ系は、同時期のマークII系やソアラと共通する部分が多く、社外パーツも中古部品も流通しています。この年代の日本車としては、部品供給がかなり恵まれている部類です。

    エンジン。 1JZ系も1G系も、トヨタの直列6気筒として実績のあるユニットです。オイル管理さえまともなら、20万kmを超えても大きく崩れません。中古部品や社外パーツも、この年代の車としては比較的入手しやすい部類です。

    構造の素直さ。 電子制御が現代の車ほど複雑ではないため、整備の見通しが立ちやすい。旧車を扱える町工場なら、対応してもらえる可能性が高いのは大きな利点です。

    加えて、この年代のトヨタ車は部品の共通性が高く、機関系は同時期のマークIIやクレスタ、ソアラと共有する部分があります。部品取り車が見つかりやすいのも、この車の強みです。

    乗り味。 ペリメーターフレームと柔らかい足まわりが生む乗り心地は、いまの車では味わえないものです。これを目的に買う人にとっては、代替がありません。

    現車確認で見るべきポイント

    クラウン S140系
    画像:M.rJirapat/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
    • 錆:フレーム、フロア、リア足まわり取り付け部、マフラー吊り。下に潜って見る
    • エアコン:全モードの作動、コンプレッサーの音、冷え
    • 電装:シート、窓、ドアロック、メーター、すべてのスイッチ
    • 冷却系:ホースの硬化、漏れ跡、リザーバーの液量と色
    • エンジン:始動性、アイドリング、オイルフィラーキャップ裏の汚れ
    • 内装の欠品:この年代の専用部品は、欠けていると補充が難しい
    • 記録簿と来歴:誰がどう維持してきたか。旧車ではこれがすべて

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    クラウン S140系
    画像:M.rJirapat/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    向いている人は、90年代の日本車が持っていた質感そのものに価値を感じる人です。分厚い内装、静かな直6、柔らかい乗り心地。当時の「いい車」の基準を、いま体験できる数少ない機会です。旧車として維持する覚悟がある人向けです。

    置き場所についても考えておいてください。全長4.8m級のセダンで、屋根のある駐車場を確保できるかどうかは、30年落ちの車の寿命に直結します。

    試乗では、直進安定性と、段差を越えたときの収まり方を見てください。ペリメーターフレームと柔らかい足まわりが生む独特の乗り味は、ブッシュが抜けているとただの緩さになります。「柔らかい」と「へたっている」の区別を、試乗でつけてください。

    やめた方がよい人は、これを実用車として使いたい人です。ABSやエアバッグ、TRCといった現代の安全装備は付いていないか、あっても限定的です。雨の日の挙動も、いまの車の感覚とは違います。

    結局、S140系の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/s130-2

    錆が軽く、記録が残っている個体なら買いです。 ただしその条件を満たす個体は多くありません。見つけたら、迷っている間に売れます。

    S140系は、バブルが崩壊した年に売り出され、それでも「いつかはクラウン」を成立させた最後の重厚長大でした。その時代の空気ごと手に入る車は、もうそれほど残っていません。

  • クラウン S230系の中古車ガイド【4つの車型から、どれを選ぶか】

    クラウン S230系の中古車ガイド【4つの車型から、どれを選ぶか】

    2022年の16代目クラウンは、この車名の歴史で最も大きな転換でした。セダンだけの車ではなくなったからです。クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート。同じクラウンの名前で、成り立ちの違う4つの車型が展開されています。

    だから中古で探すときの最初の作業は、程度の比較ではありません。どの車型のクラウンが欲しいのかを決めることです。

    念のため確認しておくと、S230系は2022年7月に発表され、クロスオーバーから順に発売されました。パワートレーンはHEVが中心で、スポーツにはPHEV、セダンにはFCEVの設定があります。全車が電動化されているのも、この世代の特徴です。

    4つの車型は、別の車と考える

    https://kuruma-dna.com/s230

    補足すると、この4つは車体の骨格から違います。クロスオーバーとスポーツは全高もタイヤも別、セダンはホイールベースが長く後席を優先、エステートはラゲッジ優先。「クラウンの中でグレードを選ぶ」感覚ではなく、「4車種の中から1台選ぶ」感覚が近いと考えてください。

    クロスオーバーは最初に登場した車型で、玉数も最も多い。セダンとSUVの中間という独特の姿勢で、実際に乗ると背の高さが素直に効いてきます。

    スポーツは最も走りに振った車型で、外観も別物です。PHEVの設定があり、動力性能の面では上位に来ます。

    セダンは、従来のクラウン像に最も近い車型です。FCEV(燃料電池)とHEVが用意され、後席の快適性を重視した設計になっています。

    エステートはワゴン型で、いちばん後から出た車型です。

    つまり中古市場で「クラウン S230系」と検索して並ぶ個体は、用途も価格も別物が混ざっています。 車型を決めずに探すと、比較のしようがありません。

    中古車サイトで探すときは、グレード名だけでなく車型まで指定して絞り込んでください。「クラウン」で検索すると、S210系以前の個体まで混ざります。年式を2022年以降にするのが確実です。

    まだ新しい車として見るべきこと

    https://kuruma-dna.com/s210-crown

    加えて、この世代は納期が長く、受注状況によっては新車がすぐ手に入りません。中古を検討する最大の理由が「待たなくていい」ことになる場合もあります。待ち時間に価値を置くかどうかで、中古の割高さの評価が変わります。

    2022年以降の車なので、持病を探す段階ではありません。見るべきは書類です。

    メーカー保証の残存。 初度登録から数年の個体なら、一般保証・特別保証が残っている可能性があります。ハイブリッドのユニットに関わる保証は特に重要で、残っているかどうかで安心感がまるで違います。継承手続きの可否と費用も確認してください。

    リコール・サービスキャンペーンの実施状況。 新しい車ほど、対策の消化状況が中古選びの中心になります。車台番号でトヨタの公式サイトから確認できますし、販売店にも聞けます。

    装備とオプション。 この世代は先進安全装備や運転支援の設定が細かく分かれます。同じグレード名でも、装着オプションで価格が変わります。何が付いているかを確認してください。

    特に確認したいのは、先進安全装備の世代とディスプレイオーディオの仕様です。同じ年式でも、オプションの有無で使い勝手が変わります。コネクテッドサービスの契約状況も、中古で引き継げるかを販売店に聞いておきましょう。

    ハイブリッドとPHEV、そしてFCEV

    クラウン S230系
    画像:Oq10pass/CC0(Wikimedia Commons)

    S230系は、パワートレーンの選択肢が広いのも特徴です。

    FCEVについて補足すると、水素ステーションは都市部に偏在しており、地方では現実的に使えない場面があります。中古価格が安く見えても、それは需要が限られている結果です。安さの理由が、そのまま使いにくさの理由になっている構図を理解しておいてください。

    HEVが中心で、玉数も多く、整備先にも困りません。PHEV(スポーツ)は充電環境が前提になるため、自宅で充電できるかを先に考えてください。FCEV(セダン)は水素ステーションの分布に左右されるため、住んでいる地域で現実的かどうかが決定的です。

    中古で安く出ていても、インフラが合わなければ使えません。 これは車の良し悪しではなく、生活環境との相性の問題です。

    逆に言えば、HEVを選べばこの問題は起きません。玉数も最も多く、整備先にも困らない。迷ったらHEVというのが、この世代では素直な結論です。

    現車確認で見るべきポイント

    クラウン S230系
    画像:Oq10pass/CC0(Wikimedia Commons)
    • 車型:クロスオーバー/スポーツ/セダン/エステート。まずここを決める
    • メーカー保証の残存と継承:初度登録日、走行距離、手続きの費用負担
    • リコール・サービスキャンペーン:車台番号で実施状況を確認
    • パワートレーン:HEV/PHEV/FCEV。自宅の充電環境、水素ステーションの有無
    • 装備:運転支援、内装、ホイール。同グレードでも差が出る
    • タイヤ:大径サイズは交換費用が高い。残溝を見る

    この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

    https://kuruma-dna.com/s220

    維持費については、2.5LのHEVで自動車税は4万5000円の区分。燃費は良く、ガソリン代の負担は車格のわりに小さい。ただしタイヤは大径で、交換費用は相応にかかります。

    試乗では、電動化の恩恵がどう出るかを確かめてください。発進の滑らかさ、モーターとエンジンの切り替わり、そして減速時の回生の効き方。S230系の完成度は、この繋ぎ目の自然さに出ます。

    加えて、クロスオーバーは背が高いぶん、立体駐車場の制限に引っかかることがあります。契約前に自宅と職場の駐車場を確認してください。

    向いている人は、クラウンという名前にこだわらず、車型で選べる人です。S230系はそれぞれの車型が別の目的で作られており、用途が合えば非常に完成度が高い。新車より安く、保証が残る個体を選べるなら合理的です。

    やめた方がよい人は、従来型のクラウンを求める人です。「いつかはクラウン」の文脈で探すと、この世代は違和感が残ります。その場合はS210系以前を検討したほうが満足度は高いでしょう。

    結局、S230系の中古は買いなのか

    https://kuruma-dna.com/s200-crown

    買ったあと最初にやることも書いておきます。まず保証継承の手続きが済んでいるかを確認し、コネクテッドサービスの契約者情報を自分に切り替える。次にタイヤの製造年週を見て、古ければ早めに交換計画を立てる。新しい車ほど、機械より契約や設定の引き継ぎが手間になります。

    車型が用途に合っていて、保証が残っていて、リコールが消化されているなら買いです。 まだ新しいぶん、程度より条件で選べます。

    S230系は、トヨタが「いつかはクラウン」という物語を自分から壊した世代でした。壊したあとに何を作ったのかは、実際に乗ってみないと分かりません。

  • GRヤリスとは

    GRヤリスは、ラリーに出るために作られた市販車です。順番が普通と逆で、売れる車を競技用に仕立てたのではなく、競技のための車を市販しました。

    前日譚が2018年のNCP131、ヴィッツGRMNです。スーパーチャージャーを積んだ1.8Lで、生産はわずか150台。トヨタが本気で走りに振ったコンパクトを作れることを、社内外に示すための一台でした。

    そして2020年のGXPA16、GRヤリス。3ドアの専用ボディ、前後で異なるプラットフォームの組み合わせ、1.6Lの3気筒ターボG16E-GTS型、そしてGR-FOURと名付けられた四輪駆動。ベース車のヤリスと共通する部分はごくわずかで、実質的には別の車です。生産も専用の工場で行われました。

    これが成立した理由は明快で、WRCに出るための車両規則がそれを求めたからです。ただし、規則が求めていたのは台数だけであって、ここまでの中身は必須ではありませんでした。作りすぎたと言っていいでしょう。だからこそ、モータースポーツから離れた層にも売れています。

    GRヤリスの歴史は、大手メーカーが「勝つため」という理由を手にしたときに何が起きるかの記録です。