カテゴリー: ロードスター

  • ロードスター – NC1/NC2/NC3 【大事なものを守るために、あえて大きくなった三代目】

    ロードスター – NC1/NC2/NC3 【大事なものを守るために、あえて大きくなった三代目】

    NCロードスターについては見た目からもわかる通り、NA→NBのような正常進化ではありません。

    これはNAとNBで守ってきた「軽量FRオープンの楽しさ」を、2000年代の安全性や快適性や商品性に合わせてもう一度成立させ直した世代でした。

    マツダは2005年の発表時、この三代目を「世界で最も売れているライトウェイトスポーツカーの、最新かつ最も進化した世代」と位置づけ、開発責任者の貴島孝雄氏も「軽快感、バランスの取れたハンドリング、全体の敏捷さといったロードスターの核を残しながら、もっと幅広いユーザーにとって使いやすく、快適で、質の高いクルマにした」と説明しています。  

    三代目の役目は、原点の更新だった

    NCの難しさははっきりしていました。

    初代NAは「失われたライトウェイトスポーツの復活」という強烈な物語を持ち、NBはその思想を商品として磨き上げた。

    では三代目は何をするのか。

    そこでNCが担ったのは、ロードスターの本質である「人馬一体」を今の時代の基準で成立させることでした。

    マツダ自身も、NCの開発ではスポーツ走行だけでなく日常でも楽しめることを重視し、人馬一体こそがこの進化したロードスターの性格を最もよく表す言葉だとしています。  

    大きくなったのは、軟派になったからじゃない

    NCでよく言われるのが「少し大きくなった」「少し重くなった」という話です。

    でも、ここを表面だけで切るのは非常にもったいない。

    2000年代のクルマとして安全性や快適性や剛性の要求が上がる中で、NCはそこに対応しながらロードスターらしさを消さないことを狙っていました。

    実際マツダは、各種新装備や技術を盛り込みながら、車重増を先代比で約10kgに抑えたと説明しており、さらにボディは曲げ剛性22%、ねじり剛性47%向上、エンジンも135mm後退させて前後重量配分とヨー慣性モーメントの最適化を図っています。

    つまりNCは、雑に肥大化したのではなく、増える条件の中でどうロードスターを守るかを本気でやった世代です。  

    だからこそ、走りの基礎体力がかなり高い

    この世代の強みは、まず土台が強いことです。

    剛性が上がり、重量配分の考え方もより徹底され、日常域でもスポーツ走行でも気持ちよく扱える方向に仕上げられている。

    派手なスペック競争ではなく、ステアを切った時の反応、姿勢変化のわかりやすさ、限界の掴みやすさといった「スポーツカーの会話能力」を底上げしているのがNCです。

    開発時の説明でも、よりパワフルなエンジンと軽量・コンパクトなボディの動的バランスを狙ったとされており、三代目らしくクルマ全体の完成度で勝負していたことが見えてきます。  

    インタビューから見えてくるのは、「広げる」覚悟だった

    NCで面白いのは、ロードスターを狭い趣味車のままにしなかったことです。

    貴島孝雄氏は発表時のコメントで「核となる資質は守りつつ、より多くの顧客にとって価値のあるものにした」と語っています。これは言い換えれば、従来ファンだけの聖域に閉じこもらず、もう少し間口を広げようとしたということです。

    実際、後に三代目開発の副プログラムマネージャーを務めた山本修弘氏も、ロードスターの魅力は「人を幸せにすること」であり、多様な楽しみ方と人とのつながりを生むところにあると語っています。NCは、その広がる魅力をちゃんと商品として実装し始めた世代でもありました。  

    NC1は、三代目の再定義そのものだった

    2005年に登場したNC1は、まずここまでで一度ロードスターを作り直したことに意味があります。

    モダンになったスタイリング、質感の上がったインテリア、強化されたボディ、そして2.0Lモデルでは6MTやビルシュタインを備えるRS系まで用意され、従来の「軽いだけのオープン」では終わらない商品力を持っていました。

    2005-2006日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのも、単に人気車だったからではなく、最新の環境・安全要件を満たしながらライトウェイトオープンスポーツとしての魅力を高い水準で成立させたことが評価されたからだと見ていいです。  

    NC最大級の発明「RHT」について

    NCを語るなら、リトラクタブルハードトップは絶対に外せません。

    2006年に追加されたこの仕様は、トランク容量を犠牲にしない世界初の軽量オープンスポーツ用電動格納ルーフとして登場しました。

    しかもルーフはシート後方・ホイールベース内に収まり、50:50の重量配分や低いヨー慣性モーメントを維持するよう設計されている。

    要するにこれは「便利な屋根」ではなく、ロードスターの運動性能を崩さずに快適性と所有満足を上げるための装備だったわけです。

    貴島氏自身も、このRHTを「人馬一体の喜びをより多くの人に感じてもらうための一台」として語っています。  

    RHTがすごかったのは、性格を増やしたこと

    従来のロードスターは、どうしても幌の気軽さと引き換えに、人によっては日常の快適性や安心感で一歩引く部分があった。

    でもNCのRHTはそこを崩した。クローズド時の安心感や静粛性を高めつつ、オープン時にはちゃんとロードスターでいられる。

    しかもトランクを削らず、開閉も12秒という速さで終わる。ロードスターの世界観を変えずに、ユーザー層だけを広げたこの一手はかなり強いです。

    NCが万人向けになってしまったのではなく、万人が入りやすい入口を作ったと見るべき世代なのは、こういうところに出ています。  

    NR-A、やっぱりロードスターは走りのクルマだった

    一方でNCは間口を広げただけの世代でもありません。

    2006年にはNR-Aも設定され、車高調整機構付ビルシュタイン、スーパーLSD、フロントタワーバーなどを備えたワンメイクレース向けベース車として用意されました。

    つまりマツダ自身が、NCを快適になったロードスターで終わらせず、ちゃんとモータースポーツ側にもつながる素性を持ったクルマとして扱っていたわけです。

    ロードスターが文化として続いた理由の一つは、こうして裾野を広げながら、芯の部分では走りを薄めなかったことにあります。  

    NC2/NC3は、三代目をさらに磨き込んだ後半戦

    2008年の改良ではFleshed Roadsterとしてリフレッシュされ、20周年を迎えた2009年には記念車も用意されました。

    20th AnniversaryはRSソフトトップとVS RHTをベースにRECAROシートや専用バッジなどを備えた仕様で、NCがすでに現行商品であると同時に20年続く文化の担い手になっていたことを示しています。

    ここまで来るとNCはもう、単なる現代化の役目だけではない。NAから続くロードスターという物語を、量産スポーツとして持続させる中核世代になっていたのです。

    高水準な「使えるのにちゃんと楽しい」

    NCの本当の強みはここです。

    NAのような原初の軽さとも、NBのような端正な熟成とも少し違う。

    NCは、剛性、快適性、質感、使い勝手、安全性をしっかり引き上げながら、それでもロードスターに必要な気持ちいい回頭性やオープンで走る意味を残した。

    しかもRHTやNR-Aのように、快適性にも走りにもそれぞれ深く踏み込んでいる。

    だからNCは、ライトウェイトスポーツの理想を守ったというより、理想を生活に持ち込みやすくした世代と言った方が近いです。  

    ロードスターにおけるNCの立ち位置

    ロードスターの系譜でNCは、NAほど神話的ではないし、NBほど通好みでもない。

    でもこの世代がなければ、ロードスターはただの懐古的な軽量オープンで終わっていたかもしれない。現代基準の中で、快適性も商品性も上げ、それでも人馬一体を守る。さらにRHTという新しい答えまで出した。

    NCは、ロードスターを昔ながらの名車から今も成立するスポーツカーへ押し上げた三代目です。2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞も、その仕事の大きさを物語っています。  

    まとめ

    NCロードスターを一言でいえば、

    原点を守るために、あえて現代化を引き受けた三代目」です。

    NAやNBほど軽さの神話で語られないぶん、評価が割れやすい世代ではある。

    でもロードスターという名前を21世紀でもちゃんと通用させた、大事な一台なのです。

  • ロードスター – ND5RC/NDERC 【もう一度、原点に戻ってきた四代目】

    ロードスター – ND5RC/NDERC 【もう一度、原点に戻ってきた四代目】

    NDはNCで一度現代化したロードスターを、少しだけ原点側へ引き戻すためのモデルでした。

    マツダ自身も四代目の開発テーマを「Innovate in order to preserve」と説明しており、環境性能や安全性能の要求がはるかに厳しくなった時代でも、初代が持っていた軽量スポーツの純粋な楽しさを守ることを狙っていました。

    しかもNDは歴代で最もコンパクトなロードスターで、先代NCより100kg以上軽いと発表されています。

    つまりNDは、進化のために足していく世代ではなく、守るために削っていった世代でした。  

    「もっと立派」ではなく「もっと本質」

    NDの面白さはここです。

    普通なら世代が進むほど、ボディは大きく、装備は増え、スポーツカーもどんどん重くなっていく。でもNDは逆をやった。

    主査の山本修弘氏はwebCGのインタビューで、開発の途中でいろいろ見つめ直し、「本当に欲しいものだけにしよう。不要なものはそぎ落とそう」と考えたと語っています。

    しかもリーマンショックによる開発の停滞すら、ロードスターは本来どうあるべきかを考え直す機会になったとも振り返っている。

    NDは、苦しい状況の中で原点回帰を選び直したクルマでした。  

    だからNDは、軽いだけじゃなく小さい

    NDを語るとき、つい「100kg以上軽量化」に目が行きます。

    でも本質はそこだけじゃない。

    マツダは四代目を「歴代で最もコンパクト」だと説明していて、実際にNDは全体の寸法感からしてかなり凝縮されています。ロードスターは昔からパワーの数字で勝負するクルマではなく、ドライバーがクルマを使い切れることに価値があった。

    NDはそこに真正面から戻っていて、サイズ、重量、着座感、視界、操作感まで含めて「人が主役」のスポーツカーとして組み直されている。単なるダイエットではなく、クルマ全体を小さく濃くしたのがNDなのです。  

    SKYACTIV世代の「人馬一体」

    NDは新世代マツダの商品群の一員でもありました。つまり魂動デザインとSKYACTIV技術の文脈の中で作られたロードスターです。

    ただし、ここで面白いのは、ロードスターが単にその新世代技術の実験台になったわけではないこと。

    マツダは四代目について、SKYACTIV技術を採り入れつつも、感覚や感性を通じて味わう楽しさを高めることに開発の焦点を置いたと説明しています。

    要するにNDは、新技術を見せびらかすためのロードスターではなく、新技術で人馬一体を磨き直したロードスターだったわけです。  

    大事なのは「削る勇気」だった

    山本修弘氏の話を追うと、NDの開発思想はかなりはっきりしています。

    世界市場からは当然いろいろな要求が来る。もっと大きく、もっと豪華に、もっと強く、という方向です。

    でも山本氏はそれを全部そのまま飲み込まず、ロードスターは何を残すべきかを見極めた。webCGのインタビューで語っている「本当に欲しいものだけ」「不要なものはそぎ落とそう」という一節は、NDのすべてをかなり正確に表しています。

    NDが高性能化一辺倒にならず、あくまで「軽快で、使い切れて、楽しい」側に踏みとどまったのは、この判断があったからです。  

    ND5RCは、四代目の核そのもの

    まずソフトトップのND5RC。

    これは四代目ロードスターの思想をいちばんストレートに表しているモデルです。軽く、小さく、開けて、FRで走る。その原点が最も濃い。

    2015年にグローバル導入が始まったNDは、「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、さらに2016年には「World Car of the Year」と「World Car Design of the Year」も獲得しました。

    評価されたのは単なるデザインの美しさだけではなく、現代の条件の中でライトウェイトスポーツの価値をこれだけ鮮明に提示したことだったと見ていいです。

    ND5RCは、四代目の本命というより、ロードスターという思想の再提示そのものでした。  

    速さより反応の良さ

    NDの美点は、スペック表よりもドライバーへのフィードバックにあります。

    アクセルに対する車体の出方、ステアに対する回頭の軽さ、座った瞬間から感じるコンパクトさ。そういう一つひとつの反応が薄まっていない。

    マツダが四代目で繰り返し打ち出したのも、絶対性能ではなく「pure driving fun」でした。だからNDは大排気量の速さや高級GT的な重厚さではなく、操作に対してクルマがすぐ返事をしてくることが強みになっている。

    ロードスターらしさがいちばん解像度高く見える世代の一つです。  

    RFで出た、また別の答え

    2016年に追加されたロードスターRFもかなり重要です。

    RFは「Retractable Fastback」の名の通り、単なる電動ハードトップではなく、ファストバックの美しいシルエットそのものを商品価値にしたモデルでした。

    マツダは、先代のリトラクタブルハードトップが目指した「オープンカーの楽しさを身近に」という価値を引き継ぎながら、従来の考え方にとらわれず、さらに進化させたと説明しています。

    しかもRFはファストバックスタイルでありながら、トランク容量をソフトトップと同等に維持し、限られたスペースにルーフを効率よく収納する仕組みまで実現していた。

    ただの屋根付きではなく、クーペっぽい美しさとオープンの楽しさを両立させた別解だったわけです。  

    NDERCのオトナさ

    RFことNDERCの意味は、ロードスターの世界を少し広げたことにあります。

    ソフトトップの軽快さとは違う、静粛性や包まれ感やファストバックならではの雰囲気を加えながら、それでも「Lots of Fun」の価値からは外れない。

    マツダもRFを、ロードスターが26年間守ってきた価値を体現する一員だと説明しており、さらに日本導入時には「オープンカーの楽しさを、より多くのお客様にお届けするために」と明言しています。

    つまりRFは、ロードスターを別物にしたのではなく、ロードスターにもう一つの入口を増やしたモデルでした。  

    2018年改良で、NDはさらに熟した

    NDは原点回帰だけで終わっていません。

    2018年の商品改良では、マツダ自身が四代目のコンセプトを「人生を楽しもう ― Joy of the Moment, Joy of Life」と説明し、ロードスター/RFの両方で人馬一体の走りの楽しさをさらに深める方向を打ち出しました。

    海外向けリリースでは2.0Lエンジンの高回転化と出力向上も公表されていて、NDは「軽いからこれで十分」に留まらず、ドライバーの反応にさらに気持ちよく応える方向へ磨かれていt他のです。

    原点回帰のまま止まるのではなく、原点を現代の技術で熟成させたのが後期NDです。  

    NDらしさの象徴、『990S』

    NDの思想がどれだけ本気だったかは、2021年の990Sを見るとよく分かります。

    マツダはこの特別仕様車について、「ロードスターの原点に立ち返り、『軽いことによる楽しさ』を追求した最軽量グレード」と説明しています。

    つまり四代目は、世代後半になってもなお「もっと軽さへ」「もっと原点へ」という方向に掘り進められていた。普通は世代後半になるほど装備追加や商品力の底上げに寄るものですが、NDはそこでさえ軽さの価値を掘り返してくる。

    これはかなりロードスターらしいし、かなりNDらしいです。  

    だからこそ、原点回帰でありながら懐古ではない

    これがNDの惚れ惚れするほど上手い設計です。

    軽くした。小さくした。オープンの楽しさを前に出した。だから一見すると昔へ戻ったように見える。

    でも実際には、SKYACTIV世代の技術、現代の安全要求、デザインの完成度、RFのような新しい選択肢まで全部持ち込んだ上で、それでも原点に着地している。懐古趣味ではなく、現代の条件で初代の理想をもう一回成立させたのがNDでした。

    2016年に累計生産100万台を達成できたのも、ロードスターが単なる昔の名車でなく、今も更新される存在であり続けたからです。  

    まとめ

    ND5RC/NDERCロードスターを一言でいえば、

    現代の技術で、もう一度ロードスターの原点を作り直した四代目です。

    NAみたいな発明でも。

    NBみたいな定着でも。

    NCみたいな現代化でもない。

    NDはその全部を踏まえた上で、「じゃあ今、ロードスターはどうあるべきか」にきっちり答えた世代です。

  • ロードスター – NB6C/NB8C 【無邪気さを研ぎ澄ませた、NAの成熟形】

    ロードスター – NB6C/NB8C 【無邪気さを研ぎ澄ませた、NAの成熟形】

    NBロードスターは、単なるキープコンセプトではないです。

    初代NAが復活させたライトウェイトスポーツの価値を、時代に合わせてもう一度設計し直したモデルです。

    1997年10月の東京モーターショーで公開され、1998年に登場したこの二代目は、ロードスターの核である軽さ、FR、オープン、そして「誰が乗っても楽しい」という原点を守りながら、商品としての完成度を一段引き上げる役目を担っていました。

    マツダ自身もロードスターの本質を「誰もが手に入れやすく、必要にして十分な性能を持つこと」だと説明しており、NBはまさにその思想を現代化した世代でした。  

    リトラを捨てたのは、魂を捨てたからではない

    NBでいちばん目立つ変化は、やはりリトラクタブルヘッドライトが消えたことですよね。残念がっている人も多い印象です。

    でもこれは単なるイメチェンではなく、時代の安全基準に適応するための必然でした。北米マツダも、NBでは歩行者保護の観点から固定式ヘッドライトへ移行したことを説明しています。

    その一方で、ボディはわずかにワイド化し、空力性能や快適性も改善。つまりNBは、見た目のアイコンを一つ失う代わりに、ロードスターというクルマを次の時代へ生かすための再設計を受けたモデルだったわけです。  

    開発思想はNAから地続きだった

    ここで重要なのは、NBがNAを否定していないことです。

    開発責任者の貴島孝雄氏は、ロードスターが一貫して意識してきた本質は「アフォーダブル」であり、ハイパワー化や複雑化よりも「走らせて誰もが楽しいと思えるクルマ」であることだと語っています。

    これはNAの「人馬一体」とほぼ同じ文脈にあります。要するにNBは、初代の成功体験に乗っかっただけの二代目ではなく、その思想を守るために何を変え、何を残すかを本気で選別したモデルだったわけです 

    NBの進化は、速さより質感の側にある

    NBの価値は、単純なスペックアップだけで語ると外します。

    もちろん1.8L系では改良が進み、後年には6速MTやビルシュタイン、トルセンLSDを組み合わせた仕様も現れます。

    けれど本質はそこではなく、操舵に対する車体の応答、幌まわりの質感、空力、室内の使い勝手、そして全体のまとまり方にあります。

    米国マツダもNBを「よりパワフルになり、数々の改良を受けた第二世代」として位置づけています。

    NAが発明だとしたら、NBは洗練と言えるでしょう。

    NB6Cは、あえて残された素のロードスター

    NB6Cは1.6Lを積むモデルで、NBになってもなお軽快さの芯を担った存在でした。

    二代目はテンパチモデルや装備充実の印象が強いですが、1.6L仕様が残されたことで、ロードスターが本来持っていた軽さと扱いやすさはきちんと守られていました。

    速さを誇示するためではなく、アクセルを踏み切れること、回して使い切れること、その気持ちよさを残していたのがNB6Cです。

    華やかさはNA6Cほどではないにせよ、二代目の中でいちばん原液に近いロードスターとも言えます。  

    NB8Cは、二代目の本命だった

    一方でNB8Cは、二代目ロードスターの完成形として見るとかなり強いです。1.8Lエンジンを軸に、年次改良で内容がどんどん濃くなっていく。

    とくに10周年記念車では、6速MT、ビルシュタイン、トルセンLSD、専用内外装まで与えられ、NBのスポーツ性と商品力の両方が一気に表に出ました。

    マツダもこの10周年記念車を世界統一仕様の限定車として展開しており、NBが単なるつなぎではなく、世界規模でロードスターというブランドを確立していく中心世代だったことがわかります。  

    そしてNBは、遊び方の幅まで広げた

    NBが偉いのは、単に熟成しただけじゃないところです。

    2001年にはパーティレース向けのNR-A、2003年には受注生産のロードスタークーペ、さらに同年末には初のターボモデルまで追加されました。

    マツダはクーペについて「ロードスターに新しい魅力を付加し、スタイリングや走行性能を重視するお客様に向けた」と説明し、ターボについては「人馬一体の走りに新次元を拓く」と打ち出しています。

    つまりNBは、ロードスターという一つの原点を守りながら、その楽しみ方をかなり広く育てた世代でもあったわけです。  

    インタビューから見えるNBの意味

    貴島孝雄氏の話を追うと、NBの意味はかなりはっきりします。

    それは「もっと高性能にする」ことより、「ロードスターらしさを崩さずに進化させる」ことです。ハイパワー車のように性能を持て余す方向ではなく、誰でも操って楽しいことを優先する。

    ロードスターがここで変に背伸びしなかったからこそ、後のNCやNDという傑作車たちまで系譜が切れずに続いたとも言えます。

    NB自体は派手に革命を起こした世代ではない。でも、革命のあとにちゃんと文化として定着させた世代でした。  

    強みは気持ちよさの密度が上がったこと

    NBの強みを一言で言うなら、NAの楽しさを薄めずに気持ちよさの密度を上げたことです。

    見た目は洗練され、実用面も上がり、剛性感も増し、グレード展開も厚くなった。それでいて、ロードスターがロードスターであるためのサイズ感やFRレイアウトや軽快さはちゃんと残った。

    だからNBは、NAより少し大人で、でも決して鈍くない。雑味を減らして、それでも遊び心は消していない。このバランス感覚こそがNB最大の武器です。  

    NBの存在は地味に見えてかなり重要だった

    NAが神話の始まりなら、NBはその神話を一過性で終わらせなかったクルマです。

    二代目がこければロードスターは「懐古趣味の当たり企画」で終わっていたかもしれない。けれどNBはそうならず、むしろ世界販売を積み重ね、2000年には2人乗り小型オープンスポーツカー生産累計世界一としてギネス認定にまでつながっていきます。

    派手さでは初代に譲るけれど、DNAを本物として繋いだ功労者としてはNBも相当でかいです。  

    まとめ

    NB6C/NB8Cロードスターを一言でいえば、

    原点を守ったまま、原点を商品として完成させた二代目です。

    NB6Cは素の軽快さ。NB8Cは熟成と厚み。

    そしてNB全体としては、NAの思想を「次の時代でも通用する形」に翻訳した世代でした。

    初代ほど神格化されたりはしない。

    でも、ロードスターという文化を続けるうえで必要だったのは、こういう二代目があってこそだったと思います。

  • ロードスター – NA6C/NA8C 【失われたライトウェイトの復権】

    ロードスター – NA6C/NA8C 【失われたライトウェイトの復権】

    NAロードスターは70年代に一度ほぼ絶滅しかけたライトウェイトスポーツカーという文化を、80年代末に現代の技術で蘇らせたクルマでした。

    マツダ自身も、60〜70年代の小型オープンスポーツが持っていた軽快なハンドリングと気軽なオープンエアモータリングを、当時の安全・品質基準で再提案するために開発したと説明しています。

    つまりNAは、新型車というより「途絶えた系譜の復活」だったわけです。  

    「そんなものいまさら売れるのか」

    開発の出発点も、いかにもロードスターらしい。

    80年代前半、ライトウェイトスポーツは市場からほぼ消えており、社内でも本当に成立するのか半信半疑でした。

    それでもマツダのエンジニアは「他社とは違う独自の商品が必要だ」と考え、企画を前へ進めていきます。

    さらに駆動方式の候補にはFF、MR、FRが並んでいたものの、最終的には「軽快で素直な運転感覚」を得るにはFRしかないと判断。

    コスト面では不利でも、理想を優先してFRオープンの道を選んでいます。  

    ロードスターの核は、最初から「人馬一体」だった

    このクルマを説明するうえで外せないのが、みなさんもお気づき「人馬一体」です。

    FRとオープンボディが決まった段階で、開発陣はこのクルマの楽しさを「人馬一体」という言葉で共有したとマツダは記しています。後から付けた宣伝文句ではなく、そもそもの開発思想そのものだったわけですね。

    GAZOOの開発者インタビューでも、貴島孝雄氏は初代ロードスターのコンセプトが「人馬一体」であり、運転して楽しいことを何より重視したと説明しています。  

    開発現場はかなり熱かった

    このクルマが伝説化して現代でも愛される理由は、思想だけではなく作り手の熱量にもあります。

    初期から開発に関わった貴島孝雄氏は、当時FC3S型RX-7を担当しながらもこのプロジェクトに加わりたくて参加し、「業務を終えた残業時間に手弁当で図面を書いていた」と振り返っています。

    しかもサスペンションまわりでは、コストがかかるダブルウィッシュボーンにこだわり、さらにトランスミッション後端とデフを結ぶパワー・プラント・フレームまで導入。

    生産現場の反発もあったそうですが、それでも「人馬一体」のために押し通した。NAロードスターの気持ちよさは、こういう面倒なことを面倒なままやった結果とも言えるでしょう。

    アメリカで行われた市場調査

    夢だけでは終わらせなかったのも面白いところです。

    1987年にはアメリカでフルスケールの樹脂製プロトタイプを使った市場調査が行われ、220人の参加者のうち57人が「発売されたらぜひ買いたい」と回答。この結果が意思決定に強い影響を与え、開発継続を後押ししました。

    そしてデザインはその年のうちに確定し、1989年に北米で発売。日本でも同年にユーノス・ロードスターとして登場します。理想だけでなく、市場性も確認した上で世に出てきたわけですね。  

    NA6Cは、軽さで走る1.6だった

    最初のNA6Cは1.6LのB6-ZE型を積み、120psを発生。

    数字だけ見ると今ではおとなしいですが、このクルマの本質は馬力ではなく、軽さとサイズと応答の良さにありました。

    全長4m未満の小さなボディ、FRレイアウト、前後ダブルウィッシュボーン、そしてオープン2シーター。今となっては贅沢なくらいに「スポーツカーの基礎体力」を真面目に揃えています。

    だからこそNA6Cは、速さそのものより、操ることがそのまま楽しさになるタイプのクルマでした。  

    NA8Cは、ただの排気量アップではない

    1993年には1.8LのBP型を積むNA8Cへ進化。

    このタイミングで貴島孝雄氏が主査を引き継いだことも、系譜としてはかなり重要です。

    NA8Cは130ps・16.0kgf-mとなり、NA6Cより明確にトルクが増しました。単なるパワー競争ではなく、ロードスターらしい軽快さを残しながら、より扱いやすく厚みのある走りに寄せた改良です。

    NA6Cが「軽さの鮮烈さ」なら、NA8Cは「熟成と余裕」に振れた初代後期の完成形と言っていいでしょう。

    強みは「全部がちょうどいい」こと

    NAロードスターの強みは、何か一つが飛び抜けていることではありません。

    ボディは小さい。重すぎない。FRである。オープンである。サスペンションは真面目。価格も当時としては手が届いた。

    つまり、運転が楽しい理由を高価なメカや大出力に頼らず、全部のバランスで成立させていたわけです。

    マツダも、以後のロードスターで一貫して軽量化と重量配分の最適化を続けてきたと説明しており、その原点がまさにNAでした。  

    だからNAは一代では終わらなかった

    NAロードスターはヒットしただけではなく、90年代のオープンスポーツ復権そのものを引き起こした存在でした。

    マツダはこのクルマが、70年代末に消えたライトウェイトスポーツを90年代に復活させるきっかけになったと位置づけています。

    実際、ロードスターの成功後には各社が小型オープンスポーツに再び目を向けるようになります。要するにNAロードスターは、1台の人気車ではなく、世界市場そのものを動かしてしまったんですね。

    今日までロードスターが「世界でもっとも成功した2シーターオープンスポーツの系譜」として続いているのも、全部ここが始点でした。  

    まとめ

    NA6C/NA8Cロードスターを一言でいえば、

    失われたライトウェイトスポーツの理想を、現代の量産車として成立させた原点です。

    NA6Cは軽さと素直さ。

    NA8Cはそこに厚みと熟成を加えた完成形。

    そして両方に共通するのは、スペックを眺めるためのクルマではなく、乗ればすぐ意味が分かるクルマだったこと。

    ロードスターの伝説はここから始まったとも言えますが、ここで「伝説になる条件」がほぼ完成していた、と考える方がしっくりきますね。