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  • ロードスター – NB6C/NB8C 【無邪気さを研ぎ澄ませた、NAの成熟形】

    ロードスター – NB6C/NB8C 【無邪気さを研ぎ澄ませた、NAの成熟形】

    NBロードスターは、単なるキープコンセプトではないです。

    初代NAが復活させたライトウェイトスポーツの価値を、時代に合わせてもう一度設計し直したモデルです。

    1997年10月の東京モーターショーで公開され、1998年に登場したこの二代目は、ロードスターの核である軽さ、FR、オープン、そして「誰が乗っても楽しい」という原点を守りながら、商品としての完成度を一段引き上げる役目を担っていました。

    マツダ自身もロードスターの本質を「誰もが手に入れやすく、必要にして十分な性能を持つこと」だと説明しており、NBはまさにその思想を現代化した世代でした。  

    リトラを捨てたのは、魂を捨てたからではない

    NBでいちばん目立つ変化は、やはりリトラクタブルヘッドライトが消えたことですよね。残念がっている人も多い印象です。

    でもこれは単なるイメチェンではなく、時代の安全基準に適応するための必然でした。北米マツダも、NBでは歩行者保護の観点から固定式ヘッドライトへ移行したことを説明しています。

    その一方で、ボディはわずかにワイド化し、空力性能や快適性も改善。つまりNBは、見た目のアイコンを一つ失う代わりに、ロードスターというクルマを次の時代へ生かすための再設計を受けたモデルだったわけです。  

    開発思想はNAから地続きだった

    ここで重要なのは、NBがNAを否定していないことです。

    開発責任者の貴島孝雄氏は、ロードスターが一貫して意識してきた本質は「アフォーダブル」であり、ハイパワー化や複雑化よりも「走らせて誰もが楽しいと思えるクルマ」であることだと語っています。

    これはNAの「人馬一体」とほぼ同じ文脈にあります。要するにNBは、初代の成功体験に乗っかっただけの二代目ではなく、その思想を守るために何を変え、何を残すかを本気で選別したモデルだったわけです 

    NBの進化は、速さより質感の側にある

    NBの価値は、単純なスペックアップだけで語ると外します。

    もちろん1.8L系では改良が進み、後年には6速MTやビルシュタイン、トルセンLSDを組み合わせた仕様も現れます。

    けれど本質はそこではなく、操舵に対する車体の応答、幌まわりの質感、空力、室内の使い勝手、そして全体のまとまり方にあります。

    米国マツダもNBを「よりパワフルになり、数々の改良を受けた第二世代」として位置づけています。

    NAが発明だとしたら、NBは洗練と言えるでしょう。

    NB6Cは、あえて残された素のロードスター

    NB6Cは1.6Lを積むモデルで、NBになってもなお軽快さの芯を担った存在でした。

    二代目はテンパチモデルや装備充実の印象が強いですが、1.6L仕様が残されたことで、ロードスターが本来持っていた軽さと扱いやすさはきちんと守られていました。

    速さを誇示するためではなく、アクセルを踏み切れること、回して使い切れること、その気持ちよさを残していたのがNB6Cです。

    華やかさはNA6Cほどではないにせよ、二代目の中でいちばん原液に近いロードスターとも言えます。  

    NB8Cは、二代目の本命だった

    一方でNB8Cは、二代目ロードスターの完成形として見るとかなり強いです。1.8Lエンジンを軸に、年次改良で内容がどんどん濃くなっていく。

    とくに10周年記念車では、6速MT、ビルシュタイン、トルセンLSD、専用内外装まで与えられ、NBのスポーツ性と商品力の両方が一気に表に出ました。

    マツダもこの10周年記念車を世界統一仕様の限定車として展開しており、NBが単なるつなぎではなく、世界規模でロードスターというブランドを確立していく中心世代だったことがわかります。  

    そしてNBは、遊び方の幅まで広げた

    NBが偉いのは、単に熟成しただけじゃないところです。

    2001年にはパーティレース向けのNR-A、2003年には受注生産のロードスタークーペ、さらに同年末には初のターボモデルまで追加されました。

    マツダはクーペについて「ロードスターに新しい魅力を付加し、スタイリングや走行性能を重視するお客様に向けた」と説明し、ターボについては「人馬一体の走りに新次元を拓く」と打ち出しています。

    つまりNBは、ロードスターという一つの原点を守りながら、その楽しみ方をかなり広く育てた世代でもあったわけです。  

    インタビューから見えるNBの意味

    貴島孝雄氏の話を追うと、NBの意味はかなりはっきりします。

    それは「もっと高性能にする」ことより、「ロードスターらしさを崩さずに進化させる」ことです。ハイパワー車のように性能を持て余す方向ではなく、誰でも操って楽しいことを優先する。

    ロードスターがここで変に背伸びしなかったからこそ、後のNCやNDという傑作車たちまで系譜が切れずに続いたとも言えます。

    NB自体は派手に革命を起こした世代ではない。でも、革命のあとにちゃんと文化として定着させた世代でした。  

    強みは気持ちよさの密度が上がったこと

    NBの強みを一言で言うなら、NAの楽しさを薄めずに気持ちよさの密度を上げたことです。

    見た目は洗練され、実用面も上がり、剛性感も増し、グレード展開も厚くなった。それでいて、ロードスターがロードスターであるためのサイズ感やFRレイアウトや軽快さはちゃんと残った。

    だからNBは、NAより少し大人で、でも決して鈍くない。雑味を減らして、それでも遊び心は消していない。このバランス感覚こそがNB最大の武器です。  

    NBの存在は地味に見えてかなり重要だった

    NAが神話の始まりなら、NBはその神話を一過性で終わらせなかったクルマです。

    二代目がこければロードスターは「懐古趣味の当たり企画」で終わっていたかもしれない。けれどNBはそうならず、むしろ世界販売を積み重ね、2000年には2人乗り小型オープンスポーツカー生産累計世界一としてギネス認定にまでつながっていきます。

    派手さでは初代に譲るけれど、DNAを本物として繋いだ功労者としてはNBも相当でかいです。  

    まとめ

    NB6C/NB8Cロードスターを一言でいえば、

    原点を守ったまま、原点を商品として完成させた二代目です。

    NB6Cは素の軽快さ。NB8Cは熟成と厚み。

    そしてNB全体としては、NAの思想を「次の時代でも通用する形」に翻訳した世代でした。

    初代ほど神格化されたりはしない。

    でも、ロードスターという文化を続けるうえで必要だったのは、こういう二代目があってこそだったと思います。

  • ロードスター – NA6C/NA8C 【失われたライトウェイトの復権】

    ロードスター – NA6C/NA8C 【失われたライトウェイトの復権】

    NAロードスターは70年代に一度ほぼ絶滅しかけたライトウェイトスポーツカーという文化を、80年代末に現代の技術で蘇らせたクルマでした。

    マツダ自身も、60〜70年代の小型オープンスポーツが持っていた軽快なハンドリングと気軽なオープンエアモータリングを、当時の安全・品質基準で再提案するために開発したと説明しています。

    つまりNAは、新型車というより「途絶えた系譜の復活」だったわけです。  

    「そんなものいまさら売れるのか」

    開発の出発点も、いかにもロードスターらしい。

    80年代前半、ライトウェイトスポーツは市場からほぼ消えており、社内でも本当に成立するのか半信半疑でした。

    それでもマツダのエンジニアは「他社とは違う独自の商品が必要だ」と考え、企画を前へ進めていきます。

    さらに駆動方式の候補にはFF、MR、FRが並んでいたものの、最終的には「軽快で素直な運転感覚」を得るにはFRしかないと判断。

    コスト面では不利でも、理想を優先してFRオープンの道を選んでいます。  

    ロードスターの核は、最初から「人馬一体」だった

    このクルマを説明するうえで外せないのが、みなさんもお気づき「人馬一体」です。

    FRとオープンボディが決まった段階で、開発陣はこのクルマの楽しさを「人馬一体」という言葉で共有したとマツダは記しています。後から付けた宣伝文句ではなく、そもそもの開発思想そのものだったわけですね。

    GAZOOの開発者インタビューでも、貴島孝雄氏は初代ロードスターのコンセプトが「人馬一体」であり、運転して楽しいことを何より重視したと説明しています。  

    開発現場はかなり熱かった

    このクルマが伝説化して現代でも愛される理由は、思想だけではなく作り手の熱量にもあります。

    初期から開発に関わった貴島孝雄氏は、当時FC3S型RX-7を担当しながらもこのプロジェクトに加わりたくて参加し、「業務を終えた残業時間に手弁当で図面を書いていた」と振り返っています。

    しかもサスペンションまわりでは、コストがかかるダブルウィッシュボーンにこだわり、さらにトランスミッション後端とデフを結ぶパワー・プラント・フレームまで導入。

    生産現場の反発もあったそうですが、それでも「人馬一体」のために押し通した。NAロードスターの気持ちよさは、こういう面倒なことを面倒なままやった結果とも言えるでしょう。

    アメリカで行われた市場調査

    夢だけでは終わらせなかったのも面白いところです。

    1987年にはアメリカでフルスケールの樹脂製プロトタイプを使った市場調査が行われ、220人の参加者のうち57人が「発売されたらぜひ買いたい」と回答。この結果が意思決定に強い影響を与え、開発継続を後押ししました。

    そしてデザインはその年のうちに確定し、1989年に北米で発売。日本でも同年にユーノス・ロードスターとして登場します。理想だけでなく、市場性も確認した上で世に出てきたわけですね。  

    NA6Cは、軽さで走る1.6だった

    最初のNA6Cは1.6LのB6-ZE型を積み、120psを発生。

    数字だけ見ると今ではおとなしいですが、このクルマの本質は馬力ではなく、軽さとサイズと応答の良さにありました。

    全長4m未満の小さなボディ、FRレイアウト、前後ダブルウィッシュボーン、そしてオープン2シーター。今となっては贅沢なくらいに「スポーツカーの基礎体力」を真面目に揃えています。

    だからこそNA6Cは、速さそのものより、操ることがそのまま楽しさになるタイプのクルマでした。  

    NA8Cは、ただの排気量アップではない

    1993年には1.8LのBP型を積むNA8Cへ進化。

    このタイミングで貴島孝雄氏が主査を引き継いだことも、系譜としてはかなり重要です。

    NA8Cは130ps・16.0kgf-mとなり、NA6Cより明確にトルクが増しました。単なるパワー競争ではなく、ロードスターらしい軽快さを残しながら、より扱いやすく厚みのある走りに寄せた改良です。

    NA6Cが「軽さの鮮烈さ」なら、NA8Cは「熟成と余裕」に振れた初代後期の完成形と言っていいでしょう。

    強みは「全部がちょうどいい」こと

    NAロードスターの強みは、何か一つが飛び抜けていることではありません。

    ボディは小さい。重すぎない。FRである。オープンである。サスペンションは真面目。価格も当時としては手が届いた。

    つまり、運転が楽しい理由を高価なメカや大出力に頼らず、全部のバランスで成立させていたわけです。

    マツダも、以後のロードスターで一貫して軽量化と重量配分の最適化を続けてきたと説明しており、その原点がまさにNAでした。  

    だからNAは一代では終わらなかった

    NAロードスターはヒットしただけではなく、90年代のオープンスポーツ復権そのものを引き起こした存在でした。

    マツダはこのクルマが、70年代末に消えたライトウェイトスポーツを90年代に復活させるきっかけになったと位置づけています。

    実際、ロードスターの成功後には各社が小型オープンスポーツに再び目を向けるようになります。要するにNAロードスターは、1台の人気車ではなく、世界市場そのものを動かしてしまったんですね。

    今日までロードスターが「世界でもっとも成功した2シーターオープンスポーツの系譜」として続いているのも、全部ここが始点でした。  

    まとめ

    NA6C/NA8Cロードスターを一言でいえば、

    失われたライトウェイトスポーツの理想を、現代の量産車として成立させた原点です。

    NA6Cは軽さと素直さ。

    NA8Cはそこに厚みと熟成を加えた完成形。

    そして両方に共通するのは、スペックを眺めるためのクルマではなく、乗ればすぐ意味が分かるクルマだったこと。

    ロードスターの伝説はここから始まったとも言えますが、ここで「伝説になる条件」がほぼ完成していた、と考える方がしっくりきますね。